特集/本誌より
「ANAのふるさと納税」の“関空グラハンツアー”に密着。運航便の間近で緊張感のある業務を見学!
「ANAのふるさと納税」の返礼品として、グランドハンドリング体験ツアーが提供されている。元々は成田空港の社員発案でスタートしたツアーが、全国への広がりを見せている。今回、関西国際空港で開かれたツアーを取材。実際の運航便で繰り広げられるリアルな現場を驚きの距離感で見学する、その様子をお伝えしよう。
ANAグループは、「ANAのふるさと納税」のサービスのなかで大阪府泉佐野市の返礼品として提供した関西国際空港での「【ANA限定】関西国際空港グラハンツアー」を催行した。
ANAグループの社員提案制度「がっつり広場」から生まれたアイディアで、2024年に千葉県成田市の返礼品として成田空港で開催されたものに端を発するこの企画。2025年度は関西国際空港(大阪府泉佐野市)、中部国際空港(愛知県常滑市)、佐賀空港(佐賀県、佐賀県佐賀市)でも実施されることになった。
今回取材した関西国際空港のツアーは、ANAあきんど、泉佐野市が調整のうえで実現したものだ。募集人数2名/寄付額20万円の「プレミアムツアー」と、募集人数10名/寄付額8万円の「ワクワクツアー」の2ツアーが設定され、前者が11月30日、後者が12月6日に催行された。
もちろん、ふるさと納税なので支払った寄付額に応じた控除が受けられる。所得やその他の控除との併用などで上限額は変動するためケースバイケースにはなるが、寄付額すべてを控除できる場合であれば、実質的な負担額は2,000円となる。寄付金額から見て、控除上限に達することになるケースの方が多いとは思うが、当然、自身の所得に応じた最大限の控除を受けられる、ということになる。所得に応じた控除上限額は「ANAのふるさと納税」のWebサイトでもシミュレーションできるので、気になる人は試してみるとよいだろう。
GSE車両の操作や運航便の貨物室での見学など驚きの内容
取材では、12月6日に催行された「ワクワクツアー」に同行。まずは会議室でのオリエンエーションで、グランドハンドリングの仕事を紹介するムービーが上映された。
このムービーは、ANAグループ運航便のグランドハンドリングを担当するANA関西空港のスタッフが作ったものだ。単に現場を見てもらうだけではなく、どのような仕事があり、どのような業務を行なっているかを知ってもらったうえで現場を見てほしい、という思いがあったという。
ランプエリアの行動における注意事項などもムービーが用意され、例えば「ケーブルやホースに足を引っかける」といった“やってはいけない例”をスタッフが実演。これまた、忙しい現場仕事の合間を縫って作られたことが伝わる、力の入ったものだった。
そして、いよいよランプに移動。まずは、GSE車両のマーシャリングカーとハイリフトローダーの体験だ。
2枚のパドルを使って、スポットへ機体を誘導するマーシャリング。一部の空港には「VDGS(Visual Docking Guidance System)」というレーザーを活用して機体を誘導するシステムが導入されているが、関西国際空港には導入されていないことから、人(マーシャラー)によるマーシャリングのみで機体を誘導している。なかでも大型機では、コクピットからマーシャラーが見やすいように、リフト機構を備えたマーシャリングカーと呼ばれる専用車両に乗って誘導を行なう。前置きが長くなったが、今回のツアーではマーシャリングの基礎的な動きの練習と、マーシャリングカーへの乗車体験が行なわれたのである。
マーシャリングの動き(サイン)はICAO(国際民間航空機関)によって定められており、主な内容をスタッフがレクチャー。そのうえで、マーシャリングカーに乗って、実際にその動きを体験するというものだ。安全のためにリフトアップする高さは実際より低めだったものの、地上ではなく、マーシャリングカーに乗ってパドルを振るという体験は得がたいものだ。
さらにすごかったのがハイリフトローダー体験。こちらもリフトアップしたハイリフトローダーに乗るのだが、実際にローダー上で迫り来るコンテナに肉薄。それだけではなく、スタッフのレクチャーのもとで、コンテナの運搬操作も体験できたのだ。乗る、動く/動かすといった実際の業務と同じ作業をできる貴重な機会であり、これは“体験ツアー”なのであると実感する。
続いては、実際の運航便に携わるグランドハンドリング業務の見学だ。ここでは、便が到着する前にグランドハンドリングスタッフが行なう「ツールボックスミーティング」にも同席。荷物量の確認や優先的に取り扱う荷物、停止位置の確認などスタッフ間でどのような情報が共有されているかを知る機会となる。
その後、到着機が入る前の駐機場を全員で歩き、障害となるゴミや路面の凍結・損傷などがないかを確認する作業にも同行。広大なランプを横一杯に広がって歩くのは、気持ちのよい体験だっただろう。
その後、羽田からの便が到着。ここからは一連のグランドハンドリング業務の見学となるが、当該便を担当するグランドスタッフの協力もあって、かなり機体に近いところで見学ができる内容。
驚くべきは貨物室へも立ち入って、現場の様子を見学できたことだ。改めて言うが、これは見学用の機体ではなく、羽田から到着して、このあと那覇へと出発する実際の運航便である。安全性が担保された範囲内で、最大限に現場を見てもらおうというスタッフの熱意が感じられるが、一方で定時性が求められるなかで真剣に作業しなければならない。「グランドハンドリングの“リアル”を間近に感じられる」…そんな言葉がぴったりだろう。
ちなみに、この貨物室への立ち入りは、募集時の案内には記載がなかった。というのも、積み降ろしする荷物の量によっては、立ち入っての見学をしてもらえる時間やスペースの余裕がない可能性があったため、確約できないことを記載できなかったのだという。こんな不確実性も、リアルな現場であることの証左だ。
そして最後は出発便のお見送り。こちらもランプの先端まで出て、参加者全員で手を振って出発便を見送った。
見学終了後、参加者には記念品が贈られたほか、一つのサプライズも。それが、この日同行スタッフが撮影していたスナップ写真をまとめたムービーが上映されたのだ。短時間でムービーを作成して、一日の最後の思い出にしてもらおうという、やはり携わったスタッフの熱意を感じる演出だった。
次のページ:
携わったスタッフに訊く、グラハンツアーの狙いと見どころ
関連記事
関連キーワードもチェック!