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今年も圧巻の規模「ドバイ・エアショー2025」現地レポート! 主要メーカーの展示や大型受注を振り返る

11月17〜21日に開催された「ドバイ・エアショー2025」。150を超える国、1,500以上の企業、そして200機を超える展示機が集結し、今年も世界有数のスケールを誇った。
会期中に実施された迫力あるフライトデモや大型契約の動向、さらに屋内展示で見えた各社の最新技術まで、現地で見た様子をレポートする。

文:AKI 写真:AKI
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中国やロシアのメーカーも参加するドバイ・エアショー。数々の展示機が並び、デモフライトも実施

 11月17〜21日、ドバイ・アール・マクトゥーム国際空港(ドバイ・ワールド・セントラル国際空港、DWC)で「ドバイ・エアショー2025」が開催された。参加国は150か国以上、企業数は1,500超、展示機は200機以上と、今年も世界有数のスケールを誇る内容となった。中東という戦略的地域性から、欧米・中国・ロシア・インドをはじめとする主要航空メーカーと防衛関連企業が一堂に集まり、民間機、軍用機、貨物機、UAV(Unmanned Aerial Vehicle、無人航空機)、AAM(Advanced Air Mobility、次世代航空モビリティ)まで幅広い領域で最新動向が披露された。

 民間機はボーイング、エアバス、エンブラエル、ATR、中国のCOMAC(中国商用飛機)、イスラエルのIAIなどが参加。数多くの展示機も姿を見せ、デモフライトも披露された。初参加となったCOMACはC909とC919を展示し、前者は会議室やバーまで備えたVIP仕様機であった。また貨物機ではIAIが777-300ERの貨物改修型(P2F)である「Big Twin」を展示、日本でも馴染みのあるカリッタ航空の塗装であった。またエンブラエルはE190フレイターや新塗装のC-390貨物機を展示。ロシアのSu-57Eもデモフライトを披露した。

 運航会社で存在感を見せたのが、UAEのシャルジャを拠点とするチャーター専門会社、アクイライン・インターナショナルだ。元シンガポール航空の747-400と元ニュージーランド航空の777を保有しており、2024年にはインドネシアを発着する巡礼用チャーターを運航したことでも有名だ。

派手なデモフライトを披露した777-9。日本ではANAが発注している。
COMACはC909のビジネスジェット仕様を展示。旅客型、貨物型、医療サービス型といった派生型を多数展開している。
初参加となったC919。控えめながら注目を集めたデモフライト。
IAIはカリッタ塗装の777-300ERSF「Big Twin」を展示。同プログラムには日本のソフトバンクも出資している。
アクイライン・インターナショナルは747-400、777-200ERを展示。

地元拠点のエアラインから、ボーイングとエアバスがともに大型受注を獲得

 今回も受注合戦は大きな話題となった。オプションを含む受注数はエアバスが232機、ボーイングが175機であった。

 主役はやはり地元勢だ。ボーイングに関しては、エミレーツ航空が777-9を65機、777Fを10機発注。これで現段階における同社からボーイングに対する発注数は計315機(777-9×270機、777F×10機、787×35機)に達した。またフライドバイは、すでに発注している787-9向けのエンジンとして、ゼネラル・エレクトリックGEnx-1Bを60基選定したことが発表された。

 エアバスはエティハド航空からA330neoを初受注(リースで9機)、さらにA350-1000を7機、A350Fを3機受注。一方でエアバス幹部はA350-1000のストレッチ版「A350-2000(仮称)」に前向きな発言をしており、今後の展開が注目される。またエミレーツ航空は777-10とA350-2000の両プログラムを後押しする考えを示した。

 小型機市場では、フライドバイがA321neoを150機(ほかオプション100機)発注して話題を呼んだが、翌日には737 MAXも150機(うち75機はオプション)発注し、両社が会場で熾烈な争いを見せた。

エミレーツ航空の最新フリートであるA350-900の機内。ビジネスクラスはA380とほぼ同仕様だ。

無人航空機や次世代モビリティが目立った屋内展示。日本企業の存在感は薄め

 屋内展示ではボーイング、エアバス、ロッキード・マーティン、RTXなどといった欧米の大手メーカーに加えて、中国のCOMACやAVIC(中国航空工業)、韓国のKAI、インド、ブラジルなどの大規模ブースが並んだ。特に多かったのがUAV(無人航空機)やRPAS(Remotely Piloted Aircraft Systems)といった無人航空機で、軍用に加え救難や物流など、民生向けの機体も増えている。

 AAM(次世代航空モビリティ)分野では、UAEでの運航が近いJobyやArcher、地元企業のAutocraftなどが実機を展示。その中で大きな注目を集めたのがホンダだ。開発中のリフト&クルーズ型AAMの機内モックアップを初公開し、400回以上飛行したサブスケール機も展示。フルスケール機は2026年春に初飛行予定という。

 一方で気になったのは日本勢の少なさだ。ホンダをはじめ数社に限られ、かつてMRJ(後にMSJと改称)が正面に掲げられ、C-2が実機参加した時代とは様変わりしてしまった。中東という特殊性はあるものの、世界市場の中で日本の航空宇宙産業が今後どう存在感を示すのか、改めて考えさせられるエアショーでもあった。

屋内展示では欧米主要企業に加え、中国や韓国なども大規模ブースを展開。UAVやRPASの展示が多かった。
AAMパビリオンではホンダに注目。リフト・アンド・クルーズ型AAMのモックアップとサブスケール機を展示。
とてつもなく広大な、将来のDWC(Dubai World Central)像。

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