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航空貨物をリードするDHLの環境戦略。日本そしてアジアで、「SAF-持続可能な航空燃料-」導入でも最先頭を走る

鮮烈なイエローの機体カラーがトレードマークのDHLは、中部国際空港(セントレア)を皮切りにアジアにおける「SAF-持続可能な航空燃料-」の導入拡大を急ピッチで進めている。国際物流の分野を先駆するDHLだからこそ、二酸化炭素削減という環境課題においてもリーダーとして最先頭を走る。
航空の世界における必須のキーワードとして注目度が高まるSAFについて、国際物流のリーダーであるDHLの運用事例からフォーカスしていきたい。
さらに、この記事の最後に用意している解説動画とあわせてご覧いただくと、SAFへの知識をより深めていただけるはずだ。

文:村田尚之 写真:村田尚之(特記以外)
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アジアにおけるグローバルハブ機能が置かれている香港国際空港に並ぶDHLの翼たち。2030年時点でのSAF使用比率の目標値は30%を掲げ、業界目標の10%を大きく上回る。

DHL ExpressのSAF戦略-強く印象付けた、中部国際空港での国産SAF導入-

 国際物流のリーディングカンパニーであるDHL Express(本社:ドイツ・ボン)は『Mission 2050』を掲げ、2050年までにロジスティクス関連の二酸化炭素排出量を削減、実質ゼロとすることを目指している。航空輸送においては持続可能な航空燃料『SAF(Sustainable Aviation Fuel)』の活用がその中核であり、グローバルではBP(イギリス)やNeste(フィンランド)、World Energy(アメリカ)といったエネルギー企業と大規模なSAF調達契約を締結している。

 日本においても2025年1月にコスモ石油マーケティングと年間720万リットルの国産SAF調達契約を締結。5月23日にはセントレア(中部国際空港)において、国産SAFを使った日本初の定期航空貨物輸送をスタートさせた。

 720万リットルという量は、セントレアからDHLのアジアにおけるグローバル拠点である香港へのフライトに換算すると500便分に相当する。こうした調達はセントレアを起点とした国産SAFサプライチェーンの一環として実現したもので、DHLジャパンが推進する環境戦略における重要な取り組みであるとともに、企業市民として地域との連携を重視する同社らしい試みの成果でもある。

 ちなみに、DHLグループでは2000年代初頭から積極的に環境問題へ取り組んでおり、日本においても東京ディストリビューションセンター屋上への約470kWの太陽光パネル設置、電動トラックやバイクの導入など二酸化炭素排出量削減に挑戦してきた。また、DHLは2030年までに航空燃料の30%をSAFに置き換えるなど、業界内でもひと際高い目標値を掲げている。そうした流れを顧みれば、国産SAFプロジェクトへの積極的な参画も極めて自然な判断であったと言えるだろう。

鮮やかなDHLカラーの機体をバックに、2025年5月23日に中部国際空港で挙行された『セントレア国産SAF供給開始記念セレモニー』。これにより、SAFを搭載した日本初の定期航空貨物輸送がスタートした。
中部国際空港での国産SAF運用開始に先立つ2025年1月28日、DHLジャパンのトニー カーン代表取締役社長とコスモ石油マーケティングの森山幸二 代表取締役社長(当時)が年間720万リットルの調達契約を締結した。
Photo:AIRLINE

SAF導入を急ぐ世界的背景と、「持続可能な航空燃料」が持つ意義

 近年、物流・輸送分野では脱炭素化への取り組みが急速に進んでいる。これは温暖化の原因として挙げられるGHG(温室効果ガス)の多くを二酸化炭素が占めており、物流・輸送分野はエネルギー分野や産業分野に次いで、その排出が多いとされている。とくに航空会社は旅客・貨物の別なく、輸送量あたりの二酸化炭素排出量が多いことから、早急な削減が求められている。こうした状況のもと、カーボンニュートラル実現に向けた切り札として注目を集めているのが『SAF』というわけだ。

 SAFは廃食用油や木くず、微細藻類といった生物由来の原料からも製造可能な航空燃料であり、従来の化石燃料と比較してライフサイクル全体で最大80%のGHG排出削減が可能となっている。

 さらにSAFは従来の航空燃料と同じように扱うことができ、使用する機体やインフラはそのまま対応可能であることも特徴だ。SAFの生産量は数年前には各国ともにテスト生産規模であったが、2023年は全世界で約6億リットル、2024年は約13億リットルと増加、2025年は約27億リットルの生産量になると見込まれている。また、2024年末にはコスモ石油と日揮ホールディングス、レボインターナショナルにより設立されたSAFFAIRE SKY ENERGYによるSAF国内製造拠点が大阪府のコスモ石油堺製油所内に完成、2025年から供給がスタートしている。

 まさに急速に進むSAFの普及だが、背景には航空会社単体での排出に加えて、サプライチェーン全体における排出量にも世界的な注目が集まっているという理由もある。企業の排出管理はScope 1(自社による直接排出)、Scope 2(購入エネルギー由来の間接排出)、そしてScope 3(サプライチェーン全体の間接排出)に分類される。

 そんななか、特に貨物航空会社をはじめとする物流業界では、Scope 3排出量の削減が大きな課題となっている。それと同時にSAFの導入は、利用企業が自社のサプライチェーンにおいてGHG排出削減を実現するための環境投資、いわゆる『カーボンインセット』とも密接な関係にある。こうした背景から、SAFは環境負荷低減のための次世代燃料として、現時点で最も有望な選択肢の一つとされている。

日本では成田、関西、そして中部の3空港に乗り入れるDHLのフライト。世界220以上の国と地域でサービスを提供しており、日本と世界を国際物流でつなぐ。写真は中部国際空港にて。
最近その名を見聞きする機会が増えたSAFだが、大きなポイントとして従来の給油インフラを変えることなく運用可能であるという点がある。空港の燃料タンクや地下配管(ハイドラントシステム)、サービサーと呼ばれる車両も従来の航空燃料と変わらない。

さらなる広がりを見せる、DHLアジア拠点でのSAF拡大

 DHLではセントレアでの国産SAF導入を皮切りに、アジア全域でSAFの活用を拡大している。2025年7月にはSAF生産大手であるNesteとの契約に基づき、シンガポール・チャンギ空港発のDHL Express便向けとして、1年間にわたりシンガポールの製油所で生産される約950万リットルのSAF供給が開始された。

 チャンギ空港にはDHLの南アジアハブが置かれており、5機のボーイング777Fによりアジアや北米間を結ぶ週12便が運航されている。今回の供給量はこれら5機の777Fによる燃料使用量の約35~40%に相当するといい、航空貨物分野ではアジアで最大級の調達量となっている。

 また2025年8月には、DHL Expressと香港のキャセイグループが航空貨物分野においてSAFのパートナーシップ契約を締結した。キャセイグループは貨物航空会社であるエアホンコンを傘下に置き、おもにDHL Expressの国際エクスプレス輸送を担っている。

 今回の契約により、キャセイグループからアジア3空港(成田国際空港、ソウル仁川国際空港、シンガポール・チャンギ国際空港)発のエアホンコン便向けに約310万リットル(2,400トン)のSAF供給を受けるという。これはエアホンコンが運航するエアバスA330Fによる香港=シンガポール便に換算すると、100便分以上に相当する量であり、約7,190トンのGHG排出量削減が見込めるという。

 航空機による輸送がDHL全体のカーボンフットプリントの約70%を占めるなか、SAFの導入は戦略的にもますます重要な課題となっている。かつては欧州や北米に比べ、政策面や製造面において立ち遅れが指摘されていたアジア域内だが、DHLではセントレアを始めとした多拠点展開が加速しており、地域間物流の脱炭素化を推進している。

2025年8月13日、DHL ExpressとキャセイグループがSAFのパートナーシップ契約を締結。エアホンコンが成田、仁川、シンガポールの3空港発のフライトで使用する約310万リットルのSAFをキャセイグループが供給する内容だ。
Photo:DHL
かつてのA300-600Fが退役し、A330Fへと機材を統一したエアホンコン。 DHL Expressとキャセイグループのパートナーシップにより、成田空港発の同社便にもSAFが供給されることとなった。
Photo:Charlie FURUSHO
2025年7月には、シンガポールに製油所を置くSAF生産大手・Neste社との契約に基づき、1年間にわたりチャンギ空港発のDHL便に対し、約950万リットルのSAFが供給される。
Photo:DHL

SAF効果を顧客にも還元する、『GoGreen Plus』という商品展開

 DHLはSAF導入の効果を荷主企業にも還元する『GoGreen Plus』サービスを2023年から展開している。これはDHLが調達・使用するSAFを荷主の輸送に対して『ブックアンドクレーム方式』で適用し、『カーボンインセット』としてScope 3排出量削減として認められる仕組みとなっている。

 2025年時点で世界の約30万社が同サービスを活用しており、日本でも大手eコマースマーケットプレイスとして知られるeBay Inc.、世界的な半導体製造装置メーカーである株式会社SCREENセミコンダクターソリューションズなどが利用者として名を連ねる。これはSAFの使用により航空輸送に伴う二酸化炭素排出量を10~90%相当削減(インセット)するもので、加えて排出削減の見える化なども図ることが可能な仕組みだ。

 つまり、DHLは航空機における燃料の構造変革にとどまらず、荷主企業の脱炭素化支援にも取り組んでおり、物流バリューチェーン全体の気候インパクト低減に向けてチャレンジを重ねているのである。

 さて、実際に搭乗する機会のある旅客便に比べ、貨物便の世界における脱炭素化は実感しづらいのも事実だ。しかし、今日では貨物便による電子機器や自動車部品、服飾品の輸送に限らず、越境e-コマースも一般的となっている。ジャンルを問わず、国境を越えてさまざまな“モノ”を運ぶDHLは、私たちの生活とも密接に関わっているし、国際輸送をリードする彼らの取り組みはぜひ知っておくべきだと言えるだろう。

DHLジャパンでは、DHLアカウントを保有する全ての顧客を対象に、温室効果ガス排出量を見える化した『排出量レポート』を無料で提供している。ここでは顧客ごとの出荷データが可視化され、年間排出量や貨物ごとの排出量、仕向国別の排出量といった項目ごとに、排出量データを詳細に確認することができる。
DHLジャパンの東京ゲートウェイでコンテナに搭載される国際航空貨物。法人顧客の間では小売り(越境EC)、製造、消費財、アパレルなど様々な業界で『GoGreen Plus』の利用が着実に広がっており、その商品化当初は、とりわけ環境意識の高い欧州企業に商品を納入するアパレル業界から利用が拡大していったという。
Photo:DHL

カーボンインセットとは?

 私たちにも馴染みのある『カーボンオフセット』というキーワード。これは企業活動などで削減しきれず排出した二酸化炭素を植林・森林保護活動により吸収、また再生可能エネルギーへの資金提供により、排出を相殺(埋め合わせ)することを意味する。

 一方の『カーボンインセット』とは企業が自社のサプライチェーンにおいて、関連部署やステークホルダーと連携を図りつつ、二酸化炭素排出量そのものを削減する仕組みを指す。これにはSAF(持続可能な航空燃料)への投資、電気自動車の導入、施設のカーボンニュートラル化や効率化プロジェクトへの投資も含まれる。

 また、サプライチェーンで温室効果ガス排出量を削減する取り組みを、荷主企業の排出削減としてカウントすることが可能となっている。

 つまり、DHLが提供する『GoGreen Plus』では「DHLが調達したSAFがネットワーク内で使用され」、「DHLは顧客のSAFへの投資に基づき、証明された環境価値(削減量)を顧客の輸送に割り当て」、「顧客企業はこれにより削減された二酸化炭素排出量を自社のScope 3削減として計上できる」という仕組みだ。つまり顧客企業のScope 3削減を支援できるサービスとなっているのである。

提供:DHLジャパン株式会社

世界的に生産が拡大しているSAFだが、その供給量はまだ十分とは言えず全ての空港で調達できるわけではない。しかし、『GoGreen Plus』ではSAFの供給が受けられない出発地からの利用であっても、顧客はDHLが調達したSAFの環境特性を享受できる仕組みが構築されている。

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