特集/本誌より

エアライン愛好家の祭典! デルタ航空の聖地で開催された「AI2025ATL」参加報告

この夏、エアラインファンにとっての夢の祭典、「エアライナーズ・インターナショナル2025 アトランタ」(略称:AI2025ATL)に参加してきました!
このイベントは、ワールド・エアライン・ヒストリカル・ソサイエティ(WAHS)が主催し、毎年初夏に北米の異なる空港近隣で開催されるコンベンションで、今年はデルタ航空の本拠地ハーツフィールド・ジャクソン・アトランタ国際空港に隣接する、デルタ・フライト・ミュージアムが会場となりました。

文:北島幸司/Koji Kitajima 写真:北島幸司/Koji Kitajima
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メイン会場。ボーイング767-200のまわりに並ぶテーブル。

マニア心くすぐるロケーション、デルタ・フライト・ミュージアムと巨大な飛行機たち

 6月26日から28日まで開催されたこのコンベンションは、まさにマニアの心をくすぐる要素が満載です。指定ホテルは空港とミュージアムに至近なルネッサンス・コンコース・アトランタ・エアポート・ホテル。駐機場に驚くほど近く、滑走路側の部屋からは空港が180度見渡せるテラス付きです。
 どれだけ近いかをグーグルマップで見てみると、空港敷地内に出島のようにせり出している場所にあることからも、その近さがわかることでしょう。国内線ターミナルと6本のコンコースに加え「Delta TechOps」という整備格納庫も視野に入り、滑走路8R/L、26R/Lの離着陸機が見えます。この時期、暑さが苦にならない人には最高のスポッティングが楽しめます。

デルタ・フライト・ミュージアム最大の展示物ボーイング747-400(N661US)。
DC-3を中心とした博物館、レガシーハンガーの機体たち。

 会場であるミュージアム敷地に向かうと、まず目に飛び込んでくるのは屋外にずらりと並んだ過去に飛んでいた機体たち。ボーイング747-400(N661US)、757-200(N608DA)、ダグラスDC-7B(N4887C)、DC-9-51(N675MC)が並び、747は機内に入って内部を見学できます。ミュージアム建屋のひさしに757の前脚を柱に見立てて支えるデザインに感心します。また、航空機のそばには翼とエンジンを付けた車(MINI)も置かれており、遊び心満載の展示に心躍ります。

 館内に入り受付を済ませると、70ドル(約1万円)を支払った参加者にはブーティーバッグ(戦利品カバン)が渡されます。この中身は毎年内容が異なり、オリジナルの絵葉書セットやレトロな時刻表などが入り、工夫があって楽しいです。

 そしてデルタ航空の歴史を物語る機体たちに迎えられます。レガシーハンガーには、DC-3(NC28341)を中心に、ハフ・ダランド・ダスターモデル、スティンソン SR-8E リライアント、トラベルエア6Bセダン(NC8878)など歴史的な機体たちがずらり。そしてメイン会場となるスピリットハンガーには、過去に経営が傾いたときに社員とOBが会社に寄贈したというボーイング767-200 “SPIRIT of DELTA”(N102DA)が中央に鎮座しています。

 館内に入り、機首部から後方を見ると、就航地を示す何本もの吊り看板の一番前に「Japan」の文字があるのも嬉しいポイントでした。さらに、ボーイング737-200のフルモーションシミュレーター体験は、4人まで1時間460ドルという破格の値段で、本物のパイロット気分が味わえます。

 コンベンションでの過ごし方は、テーブルを出展し自身のコレクションを公開するのが王道ではありますが、見て回る時間も欲しいところ。さらに、今回は博物館の展示物見学も忘れるわけにはいきません。767の他にもコンベア880の機首部分が置かれ、L-1011トライスターは胴体の半分程度が残されており、機内はデルタ歴史展示室として使われていたりします。今回は写真・絵葉書・模型コンテストの展示会場としても使われていました。

 テーブルを見て回ると同時に、ミュージアム・ショップも忘れてはなりません。普段であれば輝いて見える販売品の数々も、コンベンションのグッズの多様性に押されてしまうのは今回だけの現象です。

かなりディープな世界が広がるテーブル出展

 会場には総勢230ものテーブルが出展され、紙模型からダイキャストモデル、時刻表、安全のしおり、メニュー、ちらしなどの紙モノ、あらゆる航空会社ロゴグッズが並ぶという、マニア心をくすぐるレアアイテムが満載でした。

 全ては紹介しきれませんので、ここでは特に印象的だったテーブルをいくつか紹介します。

マークス夫妻は、フロリダでアビエーション・ミュージアム・オンザ・ビーチというミュージアムを運営しており、会場ではモデルを並べていました。「JALのDC-7Cもありますし、1,000機ものモデルが並ぶミュージアムにもぜひ足を運んでください」と話します。モデルブランドDaronやSkymarksの創業者でもあります。
BUCHair(USA)のキバンク・ハータークさんは1/200、1/400スケールで1,000個もの旅客機モデルをニューヨークからトレーラーで運び込み、10テーブルを使って展示販売。1994年から30年以上このイベントに参加するベテランです。エアライン勤務経験を活かし、ボーイング707に関する書籍の著者でもあるなど、航空への造詣は深いものがあります。
スティーブ・ピノーさんは5,000枚もの航空写真スライドを持参。彼の父親が残した1950年代のコダクロームフィルムや、彼自身が撮影した1970年代の写真など、航空写真の歴史を物語る貴重なコレクションを見ることができました。スライド交換やスライドショーこそが初期の航空機写真マニアの恒例行事であり、昔のファン文化に触れることができました。
アイミー・ブラットさんは、元パンナムのスチュワーデス。1966年から91年まで在籍し、その後、デルタ航空に移りました。彼女は、「パンナムはライフスタイルで、デルタはまさに仕事でした」と名言を残しています。パンナム時代を綴った著作も販売中です。
マット・バンスさんは1972年から1/50分以上にもなる大型スケールの紙製旅客機を展示し、多くの参加者を魅了していました。ヴィッカース・バイカウントやダグラスDC-7などの造形は、まるで芸術品。セミナー会場で彼が紹介していたFedExのボーイング727-100の3Dペーパーモデルは、筆者が1984年に購入したことがある思い出の品で、懐かしさで胸がいっぱいになりました。
アンディ・ルスケさんはタルマック・デザインというショップを持ち、1/400スケールの精巧な管制塔模型を80以上も展示。PCで設計し、3Dプリンターで製作された管制塔の細部にまでこだわった作り込みには、目を見張るばかりでした。希望があれば新たな空港のものも作成可能とのことで、お気に入りの空港を指定して部屋に飾るのもいいかもしれません。
デルタ・フライト・ミュージアムの出展はジュディ・ビーンさんが担当。機内カートやエンジンブレードが目玉商品として並んでいました。デルタ航空のパイロットが配るカードも販売されており、レアアイテムを求めて多くのファンが集まっていました。ミュージアムでは月1回の定例掘り出し市を行なっており、何が出てくるかわからない楽しさがあるとのことでした。
フライングタイガーライン・ヒストリカルソサイエティ(FTLHS)代表のジョン・ディクソンさんが、1945年の会社誕生から1991年にFedExに買収されるまでのフライングタイガーラインの歴史を熱く語ってくれました。日本にも就航していた航空貨物輸送のパイオニアとしての貴重な資料は、航空史家だけでなく貨物機ファンにはたまりません。アメリカでは多くのエアラインが経営破綻、合併していきましたが、いくつかの航空会社については往時の資料を残す非営利団体が存在するところに歴史を重んじる姿勢を感じます。

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