特集/本誌より
喜界島「JAC HAUS」に泊まってみた! 航空会社がつくった廃校リノベ宿の全貌
鹿児島空港を拠点に「地域の翼」として親しまれている日本エアコミューター(JAC)。2025年3月、就航地のひとつである喜界島に、廃校となった小学校を改装したゲストハウス「JAC HAUS」をオープンしました。なぜ「JAC」の名を冠した宿泊施設が誕生したのか? 実際に宿泊した様子を交えて紹介します。

日本最短路線が就航する喜界島、JACの宿泊施設とは?
喜界島は奄美大島から約25kmの位置にある、人口約6,000人の島です。美しい自然を目当てに観光客が訪れるほか、JACが包括協定を結ぶ「サンゴ礁研究所」には、世界各国から研究者が集まります。
喜界空港へはJACが鹿児島空港から1日2往復、そして奄美空港からも2往復で就航。なかでも奄美=喜界線の飛行時間は驚きの「約10分」で、2024年7月に琉球エアコミューター(RAC)の北大東=南大東線が廃止されてからは、日本一短い航空路線となっています。

今回オープンしたJAC HAUSには、喜界空港から車で約6分で到着。“校門”から中に入ると、大きなガジュマルの木が出迎えてくれます。校舎内に入りチェックインを済ませると、「ATR」と書かれたカードキーを受け取りました。3部屋ある個室には「ドルニエ」「SAAB」「ATR」と、JACの歴代の機種名がつけられており、飛行機ファンには嬉しい演出です。
3つの教室と廊下を改装したゲストハウス内は、個室エリア、ドミトリーエリア、そして中央の共用エリアに分かれています。個室は2段ベッドとなっており、1室2名まで利用可能。パソコン作業などができるデスクとチェアがあり、価格は1泊4,800円〜の設定です。


個室以外にはドミトリータイプの大部屋に8床が用意されており、こちらは1泊3,500円〜の設定。個室、ドミトリーともにトイレとシャワールームは共用ですが、清潔感があり快適に利用できました。またキッチンスペースや洗濯機、乾燥機も自由に利用できます。


敷地内の別の校舎では、喜界町が開業した「KIKAI BASE」が営業しており、ランチ時間帯には食事を楽しむことができます。筆者が訪れた際には、地域の郷土料理である「鶏飯」を頂くことができました。またコワーキングスペースも営業しており、リモートワークができる設備が整っています。


全国で増え続ける「廃校」問題、地域航空会社の役割とは?
ここまでJAC HAUSの様子を紹介してきましたが、そもそもなぜJACは廃校となった小学校に宿泊施設をつくったのでしょうか。その背景には、日本が直面している廃校の増加という問題があります。
少子化が進む日本では、小中学校の統廃合により廃校が増え続けており、施設が現存している廃校の数は2024年時点で7,612校とされています。校舎は使用されないと廃墟になってしまい、かといって解体するにも多額の費用がかかるため、各自治体はその処遇に頭を悩ませているのです。

JAC HAUSが入る旧荒木小学校は、約13年前の2012年に喜界小学校への統合にともない廃校となりました。喜界町では旧校舎の活用方法を検討した結果、2023年にカフェとコワーキングスペースを開業。その後JACが、まだ使われていなかったスペースの活用を申し出ました。
同社にとって、宿泊施設の不足が喜界島への観光客誘致のボトルネックとなっていたほか、サンゴ礁の研究で同島に長期滞在する学生の宿泊先も必要でした。JAC HAUSは、これらの課題を解決するために生まれたのです。

JACによる宿泊施設の運営は、航空会社としての課題を解決しつつ、地域の課題解消も助けるという、まさに「地域の翼」であるJACらしい有意義な取り組みと言えるでしょう。また実際に宿泊することで、快適に滞在できることは当然ながら、カフェやコワーキングスペースを組み合わせた喜界島観光の「ベース」として利用できることもわかりました。
皆さんも喜界島を訪れた際、そして日本最短の航空路線に乗った際には、JAC HAUSに宿泊してみてはいかがでしょうか。
▼JAC HAUS
〒891-6231 鹿児島県大島郡喜界町荒木90-2
TEL: 0997-58-8018