特集/本誌より

日本=トルコ路線の今を、大阪でターキッシュ エアラインズのボラット会長が語った

トルコのナショナルデーを記念して、万博で盛り上がる大阪に来日したターキッシュ エアラインズのアフメット・ボラット取締役会長 兼 執行委員。日本の3空港とイスタンブールの間を週21便で結ぶほか、今年はパートナーのANAを同路線に迎えて、さらに強固なネットワークを構築している。

文:山田 亮(本誌編集部) 写真:山田 亮(本誌編集部)
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このほど来日したターキッシュ エアラインズのアフメット・ボラット会長。前日の関西線で到着し、この日は奈良観光も楽しんだのだという。「奈良でもトルコからの観光客を見かけました」と話す。

フラッグキャリアとして、トルコの歴史と文化を語る意味

 ホテルニューオータニ大阪、鳳凰の間で行なわれたこの夜の「Connect to Türkiye(トルコへ繋がろう)」は実に盛大なイベントで、日本とトルコ、そして主催者のターキッシュ エアラインズにゆかりある多くのゲストを招いて、アジアとヨーロッパが接し、文明のゆりかごとも呼ばれるアナトリア半島の歴史的・文化的ゆたかさを大いに伝える内容であった。

 また「OSAKA EXPO PRESS PRESENTATION」と題した、アフメット・ボラット会長自身によるメディア向けの説明の場も用意され、ここでも同社自身の最新動向と経営ビジョンだけでなく、フラッグキャリアとしてトルコの観光促進全体を、強くアピールしていた。

 トルコでは現在、日本やアメリカ、台湾、韓国など11の国々を重点ターゲットに据えて、前記したような歴史的・文化的アプローチから観光誘客を図るプロジェクトに国を挙げて取り組んでいる。これら11か国からは、2019年に200万人、2024年には6割増にもなる330万人がトルコを訪れたという。

 時を同じくして開催中の関西・大阪万博でも、トルコは「文明の黄金時代」をテーマにパビリオンを展開しており、こうした歴史資源を世界中に強くアピールしている。トルコでは、よく知られるイスタンブール歴史地区、カッパドキアの岩窟をはじめ、現在22か所のユネスコ世界遺産が登録されており、奥深い歴史に恵まれた国であることをご存知の方も多いだろう。

 さらに歴史をさかのぼり、1万2,000年前にはじまった文明の起源を突き止めるための発掘調査活動も、ターキッシュ エアラインズのスポンサードによる国際プロジェクトとして進められている。こうした活動を通じて、カッパドキアにとどまらない歴史観光資源を、世界へと発信していく役割を担っている。

会場入口に展示されていた、ターキッシュ エアラインズ・ロゴの折り紙インスタレーション。長距離を飛ぶ雁の姿からインスピレーションを得て、1961年に当時のトルコ航空が採用した。
ウェルカムスペースではトルコのさまざまな文化を紹介。ターキッシュティーやチャイはこの場で淹れてゲストに振る舞われた。
さらに進むとトルコの美しい自然や、同国内に22か所登録されている世界遺産なども紹介されていた。ボラット会長は「カッパドキアだけではない、トルコのさまざまな歴史や文化に触れて欲しい」と語った。

増大する日本からの観光客、その成長エンジンの役割

 トルコへの旅行者のうち日本人の動向はどうかというと、コロナ禍以前の2019年には10万人であったのが、2024年には13万人へと伸びており、日本の3空港(羽田・成田・関西)からイスタンブールへの直行便(週21便)を運航するターキッシュ エアラインズが、その成長エンジンの役目を果たしていることは言うまでもない。今年2月には成田空港に自社ラウンジを開設するなど、日本路線への投資にも積極的だ。

 なお、トルコから日本を訪れる旅行者も好調で、2019年の2万人から2024年には6万人まで増えているとのことであった。

茶室風の会場で行なわれたプレス・プレゼンテーションでは、ターキッシュ エアラインズの最新動向の説明があった。同社は世界で最も多くの国に就航するエアラインとして知られる(現在131か国、353地点)。

ANAとともに、日本とトルコの結びつきをさらに強化

 日本=トルコ線の状況をボラット会長はどのように見ているのか、もう少し詳しく聞いてみたい。

「成田・羽田、そして関西の3路線を合わせた日本=トルコ間のネットワークは、ターキッシュ エアラインズにとってアジアにおける最も重要な長距離路線のひとつとなっています。
 1989年に東京への初便を運航して以来、着実に高まっていく需要に応える形で、これまで日本の主要3都市へのサービスを展開してきました。
 現在では、これらの路線は最新鋭の機材と高頻度の運航スケジュールによって支えられており、日本とトルコ、さらにはイスタンブールのハブを通じてその先の世界を結ぶうえで、重要な役割を果たしています」

 さらに、今年2月にはANAによる羽田=イスタンブール線も就航し、ここでもターキッシュ エアラインズはコードシェア便名を冠している。

「ANAにとってイスタンブールは、日本とヨーロッパを結ぶ重要なゲートウェイである一方で、私たちはこの市場における大きなシェアを分かち合っています。また、ターキッシュ エアラインズにとってANAはアジア太平洋地域における最も重要なパートナーのひとつでもあります。
 ですから、ANAによるイスタンブール線就航は競争関係ではなく、双方のネットワークを補完しながら、両国間の結びつきをより強化する一歩だと捉えているのです」

 振り返れば、2023年夏に東京で開催された同社のメディアラウンドテーブルにも筆者は出席していて、その席でもボラット会長は「ANAがイスタンブール線に早期就航することを期待しています」と、力強く語っていたことを思い出した。

 その念願が叶って、ついに本拠地イスタンブールへと迎えたANAの翼。ターキッシュ エアラインズとの強固なパートナーシップを象徴するように、この夜のイベント会場にはANAの井上慎一 社長の姿もあった。ボラット会長は「ANAのイスタンブール就航を心より祝福します」とのメッセージで応えた。

盛大なガラディナーには幅広い分野からゲストが招かれており、テレビなどでお馴染みの顔もあった。日本路線の実績について、ボラット会長は「未来に期待ができる数字」と語る。
日本とトルコの友情を語る2つの史実を描いた、ターキッシュ エアラインズ制作によるドキュメンタリー作品「Kushimoto -串本-」を披露する場も設けられた。“史実”とは1890年に和歌山県串本沖で発生したオスマン帝国の軍艦「エルトゥールル号」の遭難と、その95年後の1985年、イラン・イラク戦争下のテヘランへ飛んだトルコ航空機による邦人救出フライトのことだ。このストーリーについては、5月30日発売の月刊エアライン7月号で紹介することにしよう。
「Kushimoto -串本-」の上映会では田嶋勝正 串本町長(写真)や、テヘランへの救出フライトに搭乗した元客室乗務員も登壇して、日本とトルコの友情を語った。
トルコのナショナルデーを記念して、万博で盛り上がる大阪に来日したターキッシュ エアラインズのアフメット・ボラット取締役会長 兼 執行委員。日本の3空港とイスタンブールの間を週21便で結ぶほか、今年はパートナーのANAを同路線に迎えて、さらに強固なネットワークを構築している。

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