特集/本誌より
トキエア3号機、ATR42-600で佐渡線は実現できるか?
この4月に本拠地の新潟空港へと届けられたトキエアの3号機。これまでのATR72とは違い、ひと回りコンパクトな胴体を持つATR42-600である。同社発足時からの計画である佐渡空港への就航を見越した機材選択、さらに座席数も標準より減らすことで重量を軽くした。新潟空港で、阿施光南が見てきた。

佐渡空港の滑走路長はわずか890mしかない
トキエアがこのほど導入した3号機(JA03QQ)。4月2日に新潟空港に到着し、同24日には報道陣にも公開されている。トキエアはこれまで2機のATR72-600(72席)を運航してきたが、3号機はそれよりも胴体が短いATR42-600だ。しかも国内他社よりも座席数が少ない46席として、前方12席(3列)のシートピッチを、標準の29㏌(約76㎝)から32㏌(約81㎝)に拡大している。
ATR42-600とATR72-600は胴体の長さが違うだけで予備品の多くやパイロット、整備士の資格も共通だ。しかし座席数が違えば予約システムも変わるし、故障などによるシップチェンジにも対応しにくくなる。機材繰りを考えても、同じモデルで揃える方が合理的だろう。もちろんそんなことは百も承知のうえでトキエアがATR42-600を選んだのは、佐渡線就航という目標があるからだ。
佐渡空港は滑走路長が890mしかないため、離陸距離1,315mのATR72-600では就航できない。それよりも軽いATR42-600の離陸距離も1,107mだが、これは最大離陸重量での数値なので重量を減らせば890mの滑走路でも運航は可能だ。佐渡線だけ一部空席で飛ばすという方法もあるが、トキエアではシートも撤去することでさらに重量を減らした。


前方の3列(12席)はシートピッチが32㏌(約81㎝)に拡大されている。

ただし、後方キャビンのシートピッチも29㏌(約76㎝)あるので、決して窮屈な感じはしない。
短距離離着陸型(ATR42-600S)の開発中止、その解決策を模索するトキエア
ただし、これではまだ十分ではない。佐渡=新潟間ならば燃料も軽いのでなんとかなるが、首都圏や関西圏などの空港と直結するためには、さらに多くの燃料が必要になる。たとえば燃料を消費して軽くなっている成田からのフライトならば着陸は可能だろう。しかし満席の乗客と成田までの燃料を積んでの離陸は厳しい。そこで軽い重量で佐渡から新潟まで飛び、そこで成田までの燃料を補給するというのが現実的な方法となる。
ただし日本では、乗客を乗せたまま旅客機に燃料を補給することは認められていないから、乗客はいったん降りたうえで改めて搭乗する必要がある。それだけ手間も時間もかかるから、ライバルのジェットフォイル(高速船)と新幹線での移動を選んでしまうという人もいるだろう。
そうした問題を解決する切り札として、トキエアは短距離離着陸型のATR42-600Sに期待していたのだが、これは昨年開発が中止されてしまった。佐渡空港の滑走路延長も検討されているが、それまでにはまだ時間がかかる。なかなか難しい状況だが、それをトキエアがどう解決してくれるのだろうかという楽しみもある。

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