エスエーエスは、FDAと同じ鈴与グループの企業として航空事業を支えてきた。現在は本社のある富士山静岡空港のほか全国12空港に展開している。
富士山静岡空港への乗り入れ全社の旅客ハンドリング業務も行なっているが、航空会社ごとのルールはもちろん、気持ちまで切り換えて各社の業務を担っている。
フライトオペレーションを支える重要な仕事が「航務」だ。出発前だけでなく飛行中のパイロットにもカンパニー無線で最新の気象情報を伝えるなどして支援を行なっている。
ランプハンドリングとともに、燃料の給油まで空港地上支援業務の会社が担っているケースは全国的にも珍しい。さらに給油車の整備や燃料の品質管理まで行なう。
国際線も就航している富士山静岡空港では、通関などが必要な国際航空貨物も扱う。そうした手続きもエスエーエスが行なっている。
巨大なトーイングトラクターの運転席でプッシュバックに備える。さらにタグ車や旅客搭乗橋も含めて、さまざまな資格を取って運転する車両は多い。
職種を越えた各部署のスタッフが参加する活動も盛んだ。写真の「FF(Fun Fanの略)」と呼ばれるミーティングは、エスエーエスに関わる全てのお客様と社員の笑顔のために始まり、互いの業務への理解を深め、良好なチームワークを育くむためのコミュニケーションツールとなっている。
マーシャラーの誘導で機体がスポットに停止すると、ただちに前輪に車輪止めがセットされエンジンを停止。さまざまな地上作業が開始される。
出発を前にトーイングトラクターを接続する。取材時点ではFDAとANAのほか、チェジュ航空、中国東方航空、北京首都航空の旅客機を担当していた。
到着前にスポットの安全確認と打ち合わせを行なう。ランプ業務は4名1チームが基本だが、資格取得のための訓練生や教官が加わることもある。
右手を高く掲げてパイロットに出発準備完了を合図。このあと、乗客たちに手を振って見送る。手を振り返してくれる乗客も多いという。
多くの旅客機は主翼下の給油口から圧力をかけて燃料を送り込む。着陸時の残量も計算に入れてフライトプラン通りになるよう給油する。
会社ロゴは設立時の社名である「静岡エアポートサービス」の頭文字と富士山がモチーフ。さらに、「S」にはセーフティ(安全) の意味も込められている。
兄弟会社であるFDAは1機ずつ旅客機の色を変えているが、エスエーエスの給油車は全国共通で、茶葉やミカンなど静岡をイメージさせるカラーリングだ。
富士山静岡空港は、静岡県の産品を全国に送る拠点ともなっている。浜松で収穫された花が、ていねいに新千歳行きのANA便に積み込まれていく。
到着便から乗客の手荷物を、一つひとつ丁寧に降ろしていく。このあとは、すぐに出発便への手荷物の搭載作業がスタートする。
機側での作業では、あらゆる場面で確認が重要だ。それが飛行機の、そして作業するスタッフの安全を守ることにも直結するからだ。
航空貨物はスピードが重要なので、通関などの事務作業にも迅速さが求められる。近年は国際通販などeコマースの貨物も増えているという。
入社して7 年間は旅客スタッフを務めていたという航務課の大石さん。まったく違う職種に挑戦するチャンスがあることもエスエーエスならでは。
FDA便のフライトプランは県営名古屋空港で一括して作られるが、さらに富士山静岡空港では、エスエーエスの航務課スタッフがこれから出発するパイロットに運航状況や上空の揺れなどの情報を提供している。
旅客スタッフはチームで力を合わせる業務だ。各人が無線機で常に情報を共有し、協力しながら安全・定時の運航を目指している。
エスエーエスは富士山静岡空港に就航するすべての航空会社の業務を扱い、担当者は各社で異なるルールなどの教育を受けたうえで業務に就く。写真は韓国ソウル行きチェジュ航空のチェックイン風景。