特集/本誌より

珍しいエアラインにハイブリッド塗装も。夏のヨーロッパに出現する変わったヒコーキたち

多くの人がバカンスに出かける夏のヨーロッパでは、航空需要も一気に増大する。それを少しでも取り込もうと、リゾート地への便を多く持つLCCやホリデーエアラインを中心に、各社は自前の機材のみならず、他社から機体をリースして対応する。これらの機体は珍しい航空会社のものであったり、また不思議なカラーリングであったりなど、スポッターにとって良い被写体となるとともに、運航会社やリース元などを探ってみるのも面白い。この夏、欧州各地でさまざまな機体を捉えたチャーリィ古庄氏が、こうしたリース機の魅力やその背景にある事情を解説する。

文:チャーリィ古庄 写真:チャーリィ古庄
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【Privilege Style Boeing 777-200ER(EC-MUA)】
スペインで主にウェットリース運航を専門とするエアライン、プリビレッジ・スタイルのボーイング777-200ER。リースすることを前提に、社名を入れないプライベートジェットのようなこのカラーリングが同社の通常塗装だ。これまでもLCCのノルウェーエアシャトル便などを運航した実績があるが、この時はスリナム航空のアムステルダム発パラマリボ行きのチャーター便に充当されていた。

夏休みが長いヨーロッパ、その需要に応えるエアライン各社

 我々日本人と違い、ヨーロッパの人々は夏休みに1~2か月という長期休暇を普通に取る。そうなると地元を離れてリゾート地に行きたくなるだろう。その需要に応えるため、夏季には旅行会社が1機丸ごと貸し切って販売するチャーター便の運航が多いほか、歴史的に見てもヨーロッパでは旅行会社がチャーター便やリゾート地行きの便を専門とするホリデーエアライン(一部定期便も運航)を設立するケースが多い。

【World2Fly Airbus A350-900(EC-NTB)】
カラーリングを見て「なんじゃこのA350は?」と思った機体。スペインの旅行会社であるイベロスター・グループ傘下の航空会社、ワールド2フライのタイトルだが、その下に小さく「Corendon」と書かれている。カリブ海などへのチャーター便運航を主とする前者が、トルコのホリデーエアラインであるコレンドン航空のオランダの子会社、コレンドン・ダッチ航空にリースしているものだ。この夏はアムステルダムから大西洋を渡り、カリブ海のキュラソー(オランダ領)へ毎日飛んでいる。

 近年で言うと、例えばホテル運営やクルーズ船運航も行なうドイツの大手旅行会社TUIは、TUIフライ・ドイッチュラント(ドイツ)、TUIフライ・ベルギー、TUIフライ・ネーデルランド(オランダ)、TUIフライ・ノルディック(北欧4か国)、そしてTUIエアウェイズ(イギリスとアイルランド)などの航空会社を傘下に持つ。

 さらに2019年に経営破綻したイギリスの名門旅行会社トーマスクックは、イギリス(トーマスクック・エアラインズ)などに航空会社を持っていたほか、ドイツのコンドル航空を傘下に置いていた。また、これらの航空会社に機体をリースすることを目的として設立されるエアラインもあるくらい、夏はチャーター便の需要が旺盛なのだ。

【Bulgaria Air Airbus A320(LZ-FBH)】
親会社だったトーマスクックの破綻に伴い、同グループ共通の塗装から、縞々模様が特徴的な新塗装へと変更が進むドイツのコンドル航空。だがこの機体は尾翼のみが縞々模様で、ボディには社名のみ。「LZ-FBH」の登録記号を調べるとブルガリア航空の機体だという事が分かる。同社は2022年よりコンドル航空の運航を受託している。
【Eurowings Airbus A330-300(OO-SFJ)】
夏に機体が不足するのは、LCCやホリデーエアラインだけではない。この機体はルフトハンザ・グループに属するユーロウイングスのカラーだが、登録記号はベルギー籍の「OO」。撮影地はブリュッセルだ。この日は同じルフトハンザ・グループに属し、ベルギーのフラッグキャリアであるブリュッセル航空の便として、ヨーロッパの人々の旅行先として人気のダカール(セネガル)行きのフライトに投入されていた。

ヨーロッパ内からカリブ海まで、目的地はさまざま

 これらの夏に特化したフライトは運航する季節や曜日が限られ、例えばTUIの公式Webサイトを見ると、5〜6月や9〜10月まで、週の特定の曜日のみ運航されるフライトが多い。目的地はが地中海に浮かぶイビサやマヨルカといったスペインの離島、コーフなどのギリシャの島、大西洋に浮かぶフンシャル(ポルトガル)、グランカナリア、テネリフェ(スペイン)などのリゾート地がほとんど。

 またヨーロッパに限らず、ビーチリゾートであるエジプトの観光地、フルガダやシャルム・エル・シェイクなどへ飛ぶフライトも多数運航される。さらには大西洋を越えてキューバやカリブ海へと飛ぶフライトもあるが、カリブ海にはイギリス、フランス、オランダ領の島々もあるので、距離は遠いがヨーロッパの人にとっては国内旅行の感覚なのかもしれない。

【Privilege Style A321(EC-NLJ)】
冒頭で777-200ERを紹介したプリビレッジ・スタイルのA321。この機体は今年の夏、アムステルダムをベースにKLMオランダ航空便としてバーミンガムやマドリード線の定期便へ就航中。リゾート行きの便に機材が回されることで、逆に都市間のフライトにこうしてリース機が充当されるケースもある。KLMに乗ろうとして搭乗口でこの機体に巡り合ったら、飛行機好きであれば「どういう事?」と思うに違いないだろう。

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繁忙期に使われる機体、夏以外はどこを飛んでいるのか

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