「イ・グスティ・ングラ・ライ国際空港」の歩き方
「イ・グスティ・ングラ・ライ国際空港」といっても、これでどこの空港かわかる人は少ないのではないだろうか?
「イ・グスティ・ングラ・ライ国際空港」は日本人観光客も多く訪れるインドネシア・バリ島にあるデンパサール空港の正式名称だ。
今回はリゾート感あふれる同空港を歩いてみよう。
※この記事は『航空旅行vol.30』(2019年7月発売)の連載「世界のエアポート」を再編集したものです。
バリ島の空の玄関口
デンパサール空港の名で親しまれるインドネシア・バリ島の空の玄関口は、2014年4月11日、インドネシア独立戦争の英雄であるグスティ・ングラライ将軍にちなんで、将軍のフルネームである「イ・グスティ・ングラ・ライ国際空港」に改名された。とはいえ、日本人にはすんなりと頭に入っていきにくい正式名称なので、ここでは通称であるデンパサール空港と表記していくことにする。
さてデンパサール空港のターミナルビルは国際線と国内線の2棟があり、現在の国際線ターミナルは2013年9月19日にオープンし、それまで国際線用として使われてきたターミナルが国内線ターミナルとなった。よって建物としては国際線のほうが新しく、国際線ターミナルは鉄骨とガラスを多用したモダンさがありながらも、ところどころにバリ島の伝統的な建築様式を取り入れたデザインを施しているのが特徴だ。
日本から約7時間の直行便で国際線ターミナルに到着すると時刻は夕方。1階の到着ロビーは、3階の出発ロビーから大きな屋根で覆われる吹き抜け構造となっており、バスやクルマが乗りつけるカーブサイドはオープンエアになっている。飛行機を降りてからは入国審査、バゲージクレーム、税関とずっと屋内の移動が続くので、到着ロビーは初めてバリ島の暖かな空気に直に触れられる場所だ。
到着ロビーでは一様にネームボードを掲げ、観光客を迎えに来た大勢のドライバーたちに圧倒される。いかにも急成長するアジアといった光景で、熱気に満ち溢れているのだが、もし宿泊先のホテルまでの送迎を事前に頼んでいないのであれば、いわゆる“白タク”につかまらないように注意したいポイントでもある。個人でタクシーを手配する場合は、到着ロビーの出口から続くショップエリアの途中にあるエアポートタクシーのカウンターでお願いしよう。空港からのタクシー運賃は区間により定額制になっていて、料金もカウンターで先払いなのでボラれる心配はない。とは言うものの、“白タク”は、デンパサールだけでなく世界中の空港で注意しなければいけないことなので、一般的な海外旅行への心構えをしておけば特に心配する必要はない。
ヒンドゥー教をモチーフにしたターミナル
インドネシアは、国全体で見ると大半がイスラム教だが、ここバリ島に限っては約400万人の島民のうち、約9割がヒンドゥー教徒だという。到着ロビーを出たところの正面にレンガ造りの巨大なコリアグン(ヒンドゥー教徒の寺院に見られる門)のような門があったり、デンパサールを首都ジャカルタと並んでハブ空港としているガルーダ・インドネシア航空の“ガルーダ(ウィスヌ神が乗る黄金の神の鳥)”の像などがあったりするのは、バリ島に根付くヒンドゥー教の影響を受けたものだ。もし帰国時など、時間に余裕があればこれらを探してみるのも楽しいだろう。
また、世界中から観光客が集まるだけに、土産物や飲食の店舗が充実しているのも特徴だ。出発時はもちろん、先にエアポートタクシーのカウンターで触れた到着時も、ショップエリアを蛇行する通路を抜けないと空港の外には出られない構造になっている。もしかするとデンパサールに年に何回も来るようなフリークエントトラベラーであれば、動線が長くなってしまうこれらのショップエリアは歓迎されるものではないかもしれない。ただどの店も品物は豊富で、きれいにディスプレイされているので、観光客目線で見ると、買う、買わないは別にしてウィンドウショッピングとして楽しめる。これは3階の出発ロビーも同様なので、こちらも時間があるときに覗いてみるといい。
ショップエリアでの極めつきは、出国審査を抜けた後にある巨大な免税店街だ。ここもやはり通路が右へ左へとうねうね蛇行していて、その両脇に世界的なブランドを始め、土産物を販売するショップが軒を連ねているのだが、天井が高い吹き抜けとなった中央部分にはヒンドゥー教の寺院に倣った塔が建っており、テーマパークにでも迷い込んだかのような趣向が凝らされている。多くの日本人にとって、ここに立つということは間もなく帰国するということだが、なかなかのいい雰囲気なので、搭乗直前まで旅行気分を味わうことができる。
次のページ:
国際線↔︎国内線の乗り継ぎ動線について