ケルト文化が彩る大西洋岸の絶景、航空史にもその名が刻まれた緑の島アイルランド~旅のヒントBOOKより
こんにちは! 旅のヒントBOOK編集部です。
旅のヒントBOOKは主に現地在住者やその地のリピーターを著者に迎え、大切な友人を案内したいスポットを厳選してご紹介するガイドブックシリーズです。
現在、50を超える国と地域がラインナップしています。
さらに、このシリーズから派生した海外関連のさまざまな書籍を製作しています。
今回は、ダブリン在住のアイルランド公認ナショナル・ツアーガイドでもあり、旅のヒントBOOKシリーズほかの著作がある山下直子さんによる現地レポートをお届けします。
知られざる緑の島
ダブリン空港が近づき機体が旋回しはじめると、窓に映る大地の緑のパッチワークに目を奪われることでしょう。北大西洋に浮かぶ、北海道ほどのサイズの小さな島国アイルランド。ここに降り立つ人はみな、上空からの最初の一瞥で緑鮮やかな「エメラルド色の島(Emerald Isle)」の洗礼を受けます。高緯度にあるため、厳寒の北国かのようなイメージを持たれがちですが、実のところアイルランドは真冬でも雪や氷と無縁な緑の島。エメラルド色の島とは、暖流の影響で大地が冬枯れすることなく一年中緑に覆われていることをあらわす、この島の古くからのニックネームなのです。
西の果ての大西洋岸の魅力
土着の文化や美しい自然環境が凝縮されているのは島の西部。「ワイルド・アトランティック・ウェイ」と呼ばれる大西洋岸は、2500㎞に及ぶ世界最長の海岸道路として知られています。そそり立つ断崖絶壁の名所、悠久の時を刻む古代の巨石遺跡、紀元前の時代に渡来したケルト人が伝えた言語や文化が息づく離島の数々、豊富な海の幸や地元産ビールやウイスキーを楽しめる昔ながらのレストランやパブなど、魅力的なスポットが満載。観光客はもちろん、都市部では失われつつあるスローな暮らしや原風景を求めて、アイルランド人もさかんに命の洗濯に訪れるエリアです。
日本人の私たちにとって、大西洋はもっとも遠い海洋のひとつ。砕け散る波の音に、はるばる遠くへやって来たという思いがしみじみと胸にわきあがってくることでしょう。
大西洋航路の夜明けの舞台に
そんなアイルランドの大西洋岸は、航空黎明期に成し遂げられたさまざまな偉業の舞台となってきました。西の隣国は大西洋を隔てたカナダやアメリカ。北大西洋航路が主だった時代には、アイルランド西部がヨーロッパの空の玄関口だったのです。1919年6月15日の午前8時40分、世界初の大西洋無着陸横断飛行を成し遂げた2人の飛行士ジョン・アルコックとアーサー・ブラウンが着陸したのもアイルランド西部でした。英デイリーメール紙による1万ポンド(現在の金額で約100万ポンド=約1億4000万円)の懸賞に応募した2人は、爆撃機を改造したヴィッカーズ・ヴィミー号に乗り込み、カナダのニューファンドランドを出発。霧や大吹雪、さまざまな故障に見舞われた約16時間の命がけの飛行の末に、アイルランドのゴールウェイ県、クリフデン近郊のデリグムラ湿原(Derrigimlagh Bog)に着陸し、航空の歴史にその名を刻みました。クリフデンの町には2人の像が、そして、着陸地の湿原には白いモニュメントが設置され、その偉業を今に伝えています。
山下直子 / Naoko YAMASHITA
早稲田大学卒業後、添乗員として世界60数か国をまわり、2000年よりアイルランド在住。アイルランド公認ナショナル・ツアーガイドとして全土を案内するほか、TV・雑誌のコーディネートも行う。趣味はサーフィン、バラ栽培、『赤毛のアン』研究。
Webサイト:ナオコガイドのアイルランド日記/
『季節で綴るアイルランド211 ケルトが彩る緑の島の心豊かな日々』山下直子 著
ケルト暦に則って、緑の島の季節の移ろいと人々の日々の営みの風景を写真と文章で綴ったフォトエッセイ。211のトピックを通してアイルランドの自然と動植物、ケルト文化などをじっくり堪能できます。合間にアイリッシュウイスキーやギネス、音楽、文学などについてのトピックも。頁をめくるごとに旅しているような気分になれる一冊です。
四六判/240ページ/定価2,200円(税込)【2025年2月18日発売】
旅のヒントBOOK『絶景とファンタジーの島 アイルランドへ 最新版』山下直子 著
活気にあふれた首都ダブリンや、北アイルランドのベルファースト、息を呑む絶景続きの海岸道路——ダブリン在住&公認ガイドの著者がこの島の魅力をたっぷりご紹介するガイドブックです。おすすめのスポット、ショップ、レストラン&カフェ、ホテルの紹介に加えて、ケルト文化や妖精、遺跡、パブ、伝統料理、音楽シーンなどの豊富なコラムも収録。
A5判/176ページ/定価1,870円(税込)
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