啓徳からチェクラップコクへ――香港、空の玄関口100年の軌跡
東洋と西洋が交差する国際都市・香港。
その空の玄関口は、時代のうねりとともに劇的な変貌を遂げてきました。
市街地すぐそばにあった啓徳空港から、海上に誕生した現在の香港国際空港へ。
アジア有数のハブ空港へと進化した100年の歩みをたどってみましょう。
伝説の啓徳から世界のハブへ
空港はいつの時代も、人々の期待と不安、出会いと別れが交差する特別な場所です。香港の空港もまた、時代の変化とともに姿を変えながら、アジアを代表する巨大ハブへと進化してきました。
香港の空港の原点は1925年、九龍半島の海岸沿いの一角、啓徳浜に開設された飛行学校にまでさかのぼります。のちにここは軍民共用の飛行場となり、戦前にはすでに国際線ネットワークの重要拠点へと成長していました。
第二次世界大戦後、啓徳空港は急速に復興と拡張を遂げ、1958年にはジェット機に対応した新滑走路が完成します。九龍の街並みをかすめるように進入する独特のアプローチは「香港カーブ」と呼ばれ、世界中の航空ファンを魅了しました。航空写真家のルーク・オザワさんもその一人で、足繁く香港に通ったと言います。ルークさんの「香港カーブ」の写真は、小社刊の自叙伝的写真集「航空の世界1973-2000」に多数収録されていますので、ご覧になってみてください。
ジャンボジェットが全盛の時代を迎えると、香港はさらに旅客・貨物輸送ともにアジア屈指の拠点へと発展します。しかし同時に、啓徳には物理的に拡張の余地がなく、過密化という大きな課題も抱えるようになります。こうした状況を受けて誕生したのが、現在の香港国際空港(チェクラップコク空港)です。1998年に開港し、現在は3本の滑走路を備える巨大空港へと進化しました。パンデミック以前の旅客数は年間7500万人規模に達し、貨物取扱量では世界トップクラスを誇ります。かつて市街地と隣り合わせだった啓徳の空と、海に囲まれ世界へと大きく開かれた現在の香港国際空港。そこにはいまも、時代を映し続ける“空港という舞台”の物語が息づいています。
この香港国際空港の歩みは、『航空旅行vol.51』の企画「世界のエアポート」でも、貴重な資料とともに詳しく紹介しています。ぜひ誌面でも、その壮大な空港史を感じてみてください。
Photo:Luke H.Ozawa
Photo:Luke H.Ozawa
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特集「ANAが描く新たな欧州航路」
欧州路線が続々と拡充されたANA。2024年末から2025年にかけて開設されたストックホルム、イスタンブール、ミラノの新3路線を軸に、ANAが描く新たな空の地図を紹介します。これからANAの利用を検討している方には実用的で役にたつビジネス・プレエコ・エコノミークラスの搭乗取材や各都市の魅力を多角的にレポート。また、ANA以外の欧州航路を運航するエアラインについてもそれぞれの特徴を紹介します。
このほかに、エアバスA350-1000の導入により退役フェーズに入ったJALのボーイング777-300ERの歴史やキャビンの振り返り記事や、ボーイング767による貴重な長距離路線であるデルタ航空のハワイ線のレポートも掲載します。
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