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JAL国際線カウンターに「音声文字化機器」を設置、東京2025デフリンピック開催の11月 羽田・成田に

JALは多言語対応の「音声文字化機器」を期間限定で国際線カウンターに設置した。聴覚に障がいのある利用者や海外からの利用者とのコミュニケーションを円滑かつ正確に進めるための取り組みである。

文:桑野愛子 写真:桑野愛子
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会話をリアルタイムに文字化し、ディスプレイ上で確認できる。

誰もが旅を通じて、より豊かな人生を楽しめる社会実現に向けて

 JALグループは「誰もが旅を通じて、より豊かな人生を楽しめる社会の実現」を目指しており、アクセシビリティ向上に向けた取り組みを進めている。その中で、聴覚に障がいがある利用者や、日本語による音声でのやり取りが難しい海外からの利用者を支えるコミュニケーション施策にも注力してきた。

 今回、そのコミュニケーション施策の一環として、やり取りの内容をその場で高精度に文字化し、瞬時に視覚的な確認ができる「音声文字化機器」が設置された。羽田・成田空港の国際線カウンターに、期間限定で設けられたものである。

 国際線のチェックインカウンターでは、チェックイン手続き、搭乗案内、乗継案内、渡航条件の確認、手荷物に関する説明などの確認項目が多い。やり取りに認識のずれが生じた場合、利用者の旅程に大きな影響が出ることがある。

 「大事な確認をする場面では、不安を感じることがあります」と語るのは、株式会社JALサンライトに所属する坂上紗果さんである。坂上さんは聴覚に一部障がいがあり、空港での手続きでは、自身の言葉が相手に伝わっているか、相手の説明を正確に受け取れているかなど、不安に思うことが多かったという。

 搭乗手続きや手荷物、渡航条件など、多岐にわたる確認事項の認識のずれを防ぐために、筆談や翻訳アプリを活用して手続きを行なうこともある。しかし、筆談の記入やアプリへの入力に時間を要し、手続きが長引くことも少なくなかったという。

 そこで、今回期間限定で設置されたのが「音声文字化機器」である。同機器には大日本印刷株式会社が提供するソリューションが採用されており、発話内容をリアルタイムで文字化できるうえ、精度も高い。さらに31言語に対応した多言語機能も備えている。

発話は瞬時に文字化され、時間の短縮につながる。

日本のおもてなしの心にも通じるコミュニケーションの向上

 この音声文字化機器は、万博開催期間中に海外からの来訪者が増加したことを受け、関西国際空港に設置されていた。今回、2025年11月15日から26日開催の「東京2025デフリンピック」に向け、2025年11月に羽田空港と成田空港にも設置される運びとなった。

 手続きの時間短縮が図れた点に加え、利用者とのコミュニケーションが取りやすくなったことも大きい。「筆談やアプリ使用時は、下を向く時間が発生してしまいますが、音声文字化機器を使えば、お客さまの目を常に見てお話ができます」と語るのは、グランドスタッフとして勤務する株式会社JALスカイ所属の葛西里美さんである。

 これは、JALグループが大切にしている、日本の文化が育んだおもてなしの心にも通じる。顔を見ながら接客することで、利用者の表情や口元をその場で読み取り、より寄り添ったサービスにつなげることができる。また、ディスプレイは透明でサイズも小さいため、利用者との間に壁が生まれにくく、圧迫感もないという。

 実際に機器を使用した坂上さんは、「自分が話した言葉が文字になるのは嬉しいですし、伝わっていることが可視化されると安心します」と笑顔を見せた。

不安を抱えていた利用者も、やり取りが可視化されたことで笑顔になる。

「聴覚に障がいのあるお客さまにも安心して空港を利用してほしい」

 今回の運用を企画した日本航空株式会社の藤田凌輔さんは、本機器の設置を、すべての利用者がストレスなく手続きを進められる環境づくりにつなげていきたいと考えている。「聴覚に障がいのあるお客さまにも安心して空港を利用してほしいですし、海外からのお客様が増える昨今、このような取り組みは今後も継続していきたいですね」と語った。

設置期間:2025年11/10(月)〜11/30(日) ※予定
設置場所:羽田空港・成田空港 JAL国際線カウンター

左から、音声文字化機器を体験した坂上さん、運用を企画した藤田さん、グランドスタッフの葛西さん。

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