特集/本誌より
ソラシドエア出身者初の女性一等航空整備士が誕生。その現場業務と整備士にかける思い【前編】
ソラシドエアとAIRDOが共同で2022年に設立した株式会社リージョナルプラスウイングス(以下、RPW)。2024年10月には両社の整備部門がRPWに集約。そして、ソラシドエア出身者として初の女性一等航空整備士が2025年8月に誕生した。今回、羽田空港にて日々のライン整備を担当する田平友実子さん、そして整備現場業務とともに、教官として資格取得をサポートするAIRDO出身の別府由香里さんの業務に密着。両名の仕事や整備士としての思いに迫った。
田平友実子さん
株式会社リージョナルプラスウイングス
整備事業室 整備部 羽田チーム 3
2019年度ソラシドエア入社。入社後、整備現場業務を担当。2022年よりラインサポート生産管理(ステーションやオペレーション・ディレクターと機材繰りを調整する業務)にも従事するようになる。2022年8月にボーイング737の一等航空運航整備士、2025年8月にボーイング737の一等航空整備士の資格を取得。
別府由香里さん
株式会社リージョナルプラスウイングス
整備事業室 整備部 羽田チーム 1 サブリーダー
2010年度AIRDO入社。入社後から整備現場業務を担当。新入社員教育にも携わった。2022~2024年にANA教育訓練部専門訓練チームへ出向後、ボーイング737の資格者養成に従事し、2024年4月に帰任。現在も教官として養成に関わっている。2013年にボーイング767の一等航空運航整備士、2014年にボーイング737の一等航空運航整備士、2016年にボーイング737の一等航空整備士、2018年にボーイング767の一等航空整備士の資格を取得。
リージョナルプラスウイングス(RPW)は、ソラシドエアとAIRDOが、「地域(リージョナル)に寄り添い続け、”九州・沖縄の翼”“北海道の翼”、の2つの翼(ウイングス)で、新たな需要と価値を創出(プラス)する」想いを胸に設立した企業だ。
同社では、ソラシドエアとAIRDOの経営管理業務のほか、2024年10月に両社の整備部門が集約され、航空機整備の管理の受託と附帯する業務も行なっている。整備事業室全体では現在357名(うち女性47名)、整備部の現場整備士が211名、うち15名の女性が所属している。なお、資格取得のために訓練を受けているのは約100名で、業務と資格取得のための学習を日々両立中だ。そんななか、2025年8月に、ソラシドエア出身者として初めて、女性の一等航空整備士が誕生した。
体力面の不安や、ライフステージに伴う離職などの要因による女性のなり手や定着が課題と叫ばれるなかで、難関試験を突破。 そして、ボーイング737の一等航空整備士の国家資格を取得。日々活躍する田平友実子さんとともに、ソラシドエアのボーイング737-800の便間に行なうライン整備に同行した。
推しは「メイン・ホイール・ウェル」
業務では、一人ひとりの知識や技術力はもちろんチームワークも重要。そのためRPWでは整備部を羽田と北、南の3チームに分け、なかでも羽田チームは3グループに細分化。全9チームで9日間の勤務パターンをこなしつつ、些細な気づきでもお互いに声のかけやすい、風通しのよい環境を作っている。
ライン整備時は「常に気を張っている状態」と田平さん。そして一番神経を使うのがエンジン部分だと話す。「リミットの厳しい部分ですし、ファンブレードに損傷がないかをしっかり確認します。例えば、曲がっていると機体に振動が起き、お客さまの不快感にもつながりますし、これが事故につながる場合もあります。昼間でも暗い部分なのでライトを照らし、奥まで点検します」。
またエンジン関連ではプッシュバック時の確認も重要だと田平さん。「プッシュバックしている間にエンジンを回すため、不具合がないか、正常に作動しているかをそのタイミングでチェックします」とも話した。
ちなみに、田平さんが整備していて一番好きな場所はメイン・ランディング・ギアの格納庫、「メイン・ホイール・ウェル」とのこと。「ここはコンポーネントがいろいろあり一番複雑な場所。ハイドロがあったり、ケーブルがたくさんあったりと、確認場所が多く、一番“メカニック味”を感じる場所。資格取得のために知識が増え、理解がより深まったことで、さらに好きな場所になりました」。
常に同じ状態であるというのが前提
朝の立ち上げ時ならびに夜勤帯ではコクピットでの作業も行なう。機体システムの操作パネルを左から右へと抜けがないよう作動させ、地上で確認できる箇所はすべて点検する。なお、「機種により大きな違いがないよう配列にはボーイングの設計思想が取り入れられています」(田平さん)とも教えてくれた。ほかにも、スイッチの緩みがないかなどもチェックしている。
最後に次なる目標も。
「とにかく資格を取得したばかりなので経験を積みたい、そして技術と知識も積み重ね、ゆくゆくは周囲に安心感を与えて信頼される確認主任者(社内資格)になりたいと考えています」と田平さん。そして、次はボーイング767の資格取得に向けての奮闘の日々が待ち構えているという。
【後編に続く】
関連キーワードもチェック!
関連リンク