景色も情緒もすべてが思い出になるスリランカの鉄道旅~旅のヒントBOOKより
こんにちは! 旅のヒントBOOK編集部です。
旅のヒントBOOKは主に現地在住者やその地のリピーターを著者に迎え、大切な友人を案内したいスポットを厳選してご紹介するガイドブックシリーズです。
現在、50を超える国と地域がラインナップしています。
さらに、このシリーズから派生した海外関連のさまざまな書籍を製作しています。
今回は、スリランカ在住で旅のヒントBOOKシリーズほかの著作がある石野明子さんが、スリランカを鉄道で旅する魅力をお伝えします。
スリランカを深く知る魅力的な体験
スリランカは、日本から直行便で9時間ほど、インドの南東に浮かぶ島国です。遺跡・自然あわせて8つもの世界遺産があるほか、香り高いセイロンティーやスパイスカレーなどの食、伝統医療アーユルヴェーダ、インフィニティープールの生みの親ジェフリー・バワの建築などの文化、サーファーに人気の美しいビーチ……などなど、多彩でキラキラした魅力にあふれています。そんなスリランカで私がおすすめしたいのは鉄道の旅。ここでの鉄道は移動手段のひとつではなく、それ自体がスリランカを深く知ることができる魅力ある体験なのです。
人々の暮らしの中へ出発!
スリランカの列車はディーゼル車。日本のスマートな新幹線などとは違い、ゴツゴツした顔の列車が轟音とともにプラットホームにすべり込んでくるのは大迫力です。国内で一番大きな駅であるコロンボフォート駅のホームでも列車の停車位置などの表記はないので、自由席に駆け込む人と自分の車両を探す人、乗客に軽食を売りたい人とで、出発前のホームはちょっとした騒ぎです。
出発前のてんやわんやも落ち着いて、列車が出発すると流れる車窓の外を流れる景色に心奪われます。都市部に近いエリアでは人々の暮らしのすぐそばを走り抜けていきます。線路の上を歩いて駅に向かう人、線路の柵にカラフルな洗濯物を干すお母さん、行き交う列車に手を振る子供たち。決して裕福な暮らしでないことは一目でわかりますが、大きく揺れる椰子の木の木漏れ日のもと、たくましく生き抜いていくスリランカの人たちに思いをめぐらせずにはいられません。
車内の情緒、車窓を流れる景色
駅に停まるたび、物売りが乗車してくるのも楽しみのひとつ。藤のカゴに入ったスリランカ産の炒りピーナッツは、注文すると塩とチリをふりかけて手渡されます。ほおばれば軽く揚げたカレーリーフのいい香りが口中に。軽食の定番、小麦粉を練って焼いたロティやスリランカのカレーパンは、日本でいうプラスチックの衣装ケースに入って売られています。買った後に入れてくれるのは、スリランカの子どもたちの勉強済みのノートをリサイクルした袋。国が変われば物の使い方もさまざま、異国情緒いっぱいの列車の旅は続きます。
人気の山間部エリアに入ると、上は青空、眼下には茶畑が広がる斜面を、列車は動いているのか分からないくらいゆっくりと走っていきます。二等車からは窓が自由に開けられるので、澄んだ空気が車内にも流れ込みます。山間部は涼しいのでエアコン要らず。車窓から見える人々はダウンやニット帽を身につけていて、北海道より面積の小さな国なのにその気候の豊かさに驚きます。「セイロンティー」として知られるスリランカの紅茶がおいしい秘密は、そのバラエティに富んだ気候にあるのです。
縁と奇跡を乗せて列車は走る
決して時刻通りには走ってはくれないスリランカの鉄道ですが、そんな時間を楽しむかのように、スリランカの人々は知らない人同士でも歌を歌って過ごしたり、ツーリストの私たちに自分たちのおやつを差し出してくれたり。縁あって一緒の列車に乗り込んだ人々との時間も、きっと大事な思い出のひとつになることと思います。
効率的ではないからこそ、思いがけないできごとに出会う奇跡が詰まっているスリランカ鉄道の旅です。
石野明子 / Akiko Ishino
日本大学芸術学部で写真を学び、朝日新聞をはじめ日本国内のさまざま媒体で活動した後、2016 年にスリランカに移住。コロンボ郊外にSTUDIO FORTを立ちあげ、各種撮影を行いながらスリランカの魅力を発信中。
Instagram:studiofortlk
Webサイト:studio-fort.com
旅のヒントBOOK『最新版 スリランカへ—五感でたのしむ輝きの島』石野明子 著
スリランカに惚れこみ夫と娘とともに移住したフォトグラファーの著者が、この島の輝きを美しい写真とともにご紹介。アドベンチャーにカルチャー、アーユルヴェーダ、ビーチ、コロンボの街、スリランカの食まで、訪れる予定の人も、いつか行きたい人も、ただ興味がある人も楽しめる、スリランカの魅力をぎゅっと詰め込んだガイドブックです。
A5判/176ページ/定価1,980円(税込)
旅のごはんBOOK『スパイスカレーと野菜のおかず スリランカのまかないごはん』石野明子 著
食材ごとにスパイスなどを調整した複数のカレーやおかずを、ごはんを囲むように盛りつけるのがスリランカ流。少しずつ混ぜながら食べれば、さまざまなスパイスが香り立ち、一皿の中での栄養バランスも◎。スパイシーなカレーからヘルシーなおかず、ほっこりおやつまで。著者の自宅スタジオで現地スタッフが作る絶品まかないレシピを大公開!
B5変型判/128ページ/定価1,760円(税込)
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