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第4回 東日本大震災の復旧に尽力した京急電鉄 ~ AIRLINE×新幹線EX 特別企画

文:新幹線EX編集部 写真:新幹線EX編集部
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京急電鉄のEM30軌道検測車
東日本大震災からの復旧の際に実際に貸し出された、京急電鉄のEM30軌道検測車。

新幹線の復旧に尽力した京急電鉄

 3月11日は、東日本大震災忌。犠牲になられた方へのご冥福をお祈りするとともに、いまなお復興に尽力されている方たちに敬意を表します。
 さて、東日本大震災では、東北新幹線も大きな被災をした。その復旧には、JR各社・民鉄各社も大なり小なりの支援をして、東北の大動脈の復旧に尽力していた。東北新幹線の運転再開は、東日本大震災からの復興の原動力になるものである。

 そのようななか、印象に残っているのが、京急電鉄の「軌道検測車」貸出だ。ご存じの通り、京急電鉄は新幹線と同じ1,435㎜の軌間を採用している。もちろん、京急の電車をそのまま新幹線の線路の上を走らせるわけにはいかないが、ディーゼルエンジンで駆動する軌道検測車なら、そのまま新幹線の線路の上を走らせることができる。
 軌道検測車の役割を少し解説しておこう。新幹線に限らず、鉄道がレールの上を走ると、その荷重や振動によって、レールが少し歪んでくる。その歪みを見つけて正整のデーターをつくるのが、「軌道検測車」の役割だ。東日本大震災のような大きな災害でも、軌道はゆがむので、その復旧に「軌道検測車」は欠かせないのである。新幹線では、「ドクターイエロー」や「East i」が軌道検測車の役割を担っている。
 京急電鉄では、当時EM30と呼ばれるオーストリア・プラッサーアンドトイラー社製の軌道検測車を使用していた。その軌道検測車を、東北新幹線の復旧に使用したのである。

素早く軌道検測車の貸し出しをした京急電鉄

 東日本大震災の前、2005年の中越地震のときにも、京急電鉄では軌道検測車の貸し出しをしていた。そのため、震災翌日には、いつJR東日本から貸し出し要請があっても対応できるよう、準備に取り掛かった。3月12日の夜には京急久里浜までの検測が予定されていたが、急遽中止し、神奈川新町駅付近の保守基地で、いつでも搬出できる体制が整えられていた。
 そして、3月14日の朝に、JR東日本から検測車貸し出しの要請があり、京急電鉄とJR東日本との間で協議が始まった。そこで要請されたことは、なんと「今日貸してほしい」ということだった。
 さっそく、京急電鉄ではその日の午後に神奈川新町の保守基地で入換を行ない、同日深夜にはJR東日本東鷲宮保守基地への陸送を開始、3月15日朝には東鷲宮保守基地へ搬入が終わった。そして、検測業務にあたるJR東日本側のスタッフに講習が行なわれて、東北新幹線の復旧業務に使われることとなった。

京急線の検測はどうする?

 しかし、京急だって軌道検測車は、このEM30の1台しかいない。しかも京急電鉄だって日々の検測は欠かせない。そこで、京急電鉄では保線社員が総出で、「トラックマスター」と呼ばれる徒歩式の検測器で全線の検測をすることとなった。とにかく、全線を歩いて検測していくのである。
 結局、東日本大震災での新幹線検測業務は23日間に渡った。途中、大きな余震もあったため、オーバーホールをしたうえで、京急電鉄には5月24日に戻された。
 日頃、京急電鉄は品川・横浜間や、品川・横須賀間などで、JR東日本とは“ライバル関係”にある。しかし、いざ震災のような大規模災害が起これば、自社の検測業務が非効率になるを承知のうえで、こうした協力関係が築かれるのである。

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