連載

トルコのAJet搭乗“前”ルポ。サビハ・ギョクチェン空港で過ごした1日

月刊エアライン編集部の日々のヒコーキ活動をユル〜く紹介する連載「ある日のヒコ活」。今回は、夏にイスタンブールからアムステルダムへ移動する際に遭遇した、出発前のドタバタ劇を紹介するフライトレポートならぬ、フライト“前”レポートです。

文:ウォレンス雄太(本誌編集部) 写真:ウォレンス雄太(本誌編集部)
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別日に撮影したAJet塗装のA321neo。今回こそ搭乗は叶いませんでしたが、同社はこのA321neoやA320neoのほか、737 MAXといった最新鋭の機材を続々と導入しています。

トルコ→オランダのチケットが高すぎて…行き着いたAJet

 夏にトルコのアンタルヤやイスタンブールを訪れた筆者。次の目的地であるオランダへ向かうフライトを探したのですが…ヨーロッパ各国の夏休みの終わりとタイミングが被り、どのキャリアも高い高い。そんなとき、ふと目に止まったのが、比較的良心的な値段だったAJet(ア・ジェット)という航空会社。普段まず乗る機会がないエアラインなのはもちろん、出発空港がメインのイスタンブール空港ではなく、これまたなかなか利用機会がないサビハ・ギョクチェン空港というのも決め手となり、チケットを予約してみることに。

 AJetと聞いてピンとこない方には、2024年初頭までアナドルジェット(Anadolu Jet)だった会社と言えば…それでもピンとこないですよね(笑)。でも、実はアナドルジェット→AJetはあのトルコが誇るフラッグキャリア、ターキッシュ エアラインズの傘下のLCC。トルコ国内線のほか、トルコと中東やヨーロッパを結ぶ路線を運航。737-800とA321を80機以上保有するなど、結構な規模を誇る会社です。

アナドルジェット時代の塗装では機体に「A TRADEMARK OF TURKISH AIRLINES(ターキッシュ エアラインズのトレードマーク)」とあり、ターキッシュ エアラインズの便名で運航していましたが、AJetになってからは自社便名での運航となっています。

バスで大陸を渡り、出発地のサビハ・ギョクチェン空港へ

 そんなAJetに乗るため、イスタンブールのヨーロッパ側の中心地、タクシム広場からバスに乗車。揺られること50分、サビハ・ギョクチェン空港に到着しました。途中、ヨーロッパからアジアへと渡る橋を通過したのですが、国境を陸路で越えること自体が珍しい島国の人間としては、大陸間を陸路で移動するというのは不思議な経験です。しかも、数時間後にはまたヨーロッパに戻るというのに。

サビハ・ギョクチェン空港はイスタンブールで2番目に大きい空港で、トルコのLCC、ペガサス航空の本拠地。ターミナルはコンパクトながら、滑走路2本と広大な駐機エリアを持ち、MRO企業などの拠点もあります。

 トルコの空港はターミナルへ入る際に、一度すべての荷物を検査されます。無事にパスしAJetのカウンターへ向かうと、自動チェックイン機があったのでチェックイン。LCCなのでサービスはすべて有料で、預け入れ荷物のオプションだけは予め購入していました。一方、座席指定はしていなかったので、とりあえず割り当てられた座席を見てみると…見事にど真ん中! さすがにアムステルダムまで4時間、知らない2人に挟まれるのはキツいので、仕方なく有料で座席を指定します。

ターミナル内の様子。中央部は吹き抜けになっていて、明るく広々とした空間です。

 印刷されたバゲージタグを取り付け、自動荷物預け入れ機にスーツケースを託したら、早速保安検査&出国審査へ。そしてゲートエリアへ進むと…人、人、人の嵐! お店がここに固まっているだけでなく、出発時刻が近くならないとゲートが確定しないため、とにかくこの中央のエリアに人が滞留しているのです。しかもどのお店もトルコの物価とは思えない“ザ・空港価格”。本当は節約したいけど……朝から何も食べていなかったので、フードコートで軽くお昼とすることに。

保安検査通過後は、両側に免税店が並ぶエリアへ。人で溢れかえっていて、フードコートで座る場所を探すのもひと苦労。
最後に少しでもトルコっぽいメニューを食べるべく、比較的値段が良心的だったドネルケバブのチェーン店「Usta Dönerci」へ。これでも1,700円ほど。街中で外食した時の相場は日本とさほど変わらなかったトルコだけに、余計に高く感じます。ちなみに右上のドリンクはヨーグルトに塩と水を混ぜた「アイラン」。トルコ滞在中にちょこちょこ見かけたので、ここにきて初めて飲んでみたのですが…冷やして飲むと美味しそうな感じでした(残念ながらこのときは常温)。

いよいよ搭乗して出発、と思いきや……

 食べ終わったあとはヒコーキ撮影を……と思ったのですが、突然の大雨で目の前の誘導路すら見えない状態に。仕方なく空いているゲートで時間を潰したあと、出発ボードを見ると、本日搭乗するVF3便のゲートが確定していました。バスゲートです。

 1階のバスラウンジに降り、504A番ゲートからほぼ時間通りにボーディング。改札を通過してバスへ乗り込みます。ターミナル西端のオープンスポットに駐機していた機体の横でバスは止まりましたが…塗装が真っ白!

必要なマーキング以外の塗装が皆無に等しい、文字通り真っ白な機体が待っていました。

 タラップを上がってみると、L1ドア横には「Operated by BBN Airlines(BBNエアラインズによる運航)」と描いてありました。ヨーロッパの航空会社では機材不足を補うため、リースを専門とする会社から機材をACMIリース(※)するのが一般的で、今回はたまたまそのリース機に当たったのです。
※Aircraft(機体)、Crew(乗員)、Maintenance(整備)、Insurance(保険)の4つを一括で貸し出すこと。

真っ白な機体における、レジ以外では唯一と言っていいマーキング。小さいながらもBBNエアラインズのロゴはしっかり入っています。搭乗機は2007年にインドのキングフィッシャー航空が導入し、ギリシャのエーゲ航空を経て2023年にBBNエアラインズへやってきた、登録記号TC-GPDでした。

 ちなみにBBNエアラインズとは、2021年に設立されたトルコを拠点とするACMIリースやチャーター専門の会社です。旅客機は2024年11月現在A321×5機、A320×2機を保有。ほかに貨物機としてA321P2Fも3機運航し、将来的には777-300ERの貨物改修型も導入予定です。

機齢17年ながら、スッキリとしてモダンな頭上のライト類。一方のシートはBBNエアラインズにやってきた際に搭載されたものと思われ、特色どころかヘッドレストカバーすらない座席でした。
シートポケットにはAJetの機内サービスメニュー「AJet Café」(LCCなのですべて有料)のほか、BBNエアラインズの安全のしおりが。機材ごとに仕様が違うのか、TC-GPC、TC-GPD、TC-GPEの3機専用のものみたいです。

 自席についてしばらくすると、ボーディングも完了。ですが、待てど暮らせどドアが閉まりません。やがて「BBN Airlines」と書かれた蛍光ベストを着た整備士が乗り込んできて、もしやこれはと思いきや…直後のキャプテン・アナウンスで嫌な予感が的中。機材トラブルです。

 詳細は明かされなかったものの、明らかに解消に手こずっている様子。すでに30分以上遅れていたため、興奮した乗客の何名かが「降ろせ」と怒鳴り出し、キャビンは修羅場と化します。そして、結局不具合は解消せず、乗客全員は一旦降りてターミナルに戻ることに。苛立ちを露わにしながら降りる人もたくさんいましたが、安全第一なので仕方がありません。

待っている間は「AJet Café」メニューを眺めていたのですが、ドリンクもついたセットは日本円で“たったの”3,000円ほど。すごくオトクだから頼もうと思ったのに〜降ろされちゃったから残念です(笑)。

 ターミナルに戻ったのは14時50分ごろでした。聞けば代替機を手配していて、再出発は16時を予定しているとのこと。ゲート横の売店で1人1本、ドリンクが無料で提供されたので、受け取ってしばしターミナル内を散策します。すると、ある珍しい機体がスポットインしているのが見えたので、ダッシュで当該機のゲートへ。

やってきたのはカンボジアのスカイアンコール航空が所有するA320。奇抜な塗装はブラジルのITAことItapemirim Transportes Aéreos(2022年に運航停止)のもので、タイトルのみスカイアンコール航空仕様というハイブリッド機です。カンボジアのエアラインがなぜここに? という感じですが、どうやら現在はエジプトのナイル・エアにリースされているようでした。

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