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ボーイングが予測する、北東アジア市場の民間航空機需要(2025-2044)
2025年12月11日、ボーイングは都内の同社オフィスで向こう20年間の民間航空機市場予測を発表し、集まった記者らを前に民間航空機部門のマーケィング担当バイスプレジデント、ダレン・ハルスト氏がプレゼンテーションを行なった。
目次
日本を含む北東アジア市場では、1,515機の新造機需要
定期的に来日して日本のメディアに向けて市場の動向を伝えているダレン・ハルスト氏。2025年から2044年までの20年間、ボーイングが“北東アジア市場”と位置付ける日本と台湾、韓国においては計1,515機の新造機需要があり、そのうち51%の770機をナローボディ(単通路)、42%の640機をワイドボディ、6%の85機を貨物機、残る20機をリージョナルジェットが占めるという需要予測であった。
まずダレン氏は今世紀がすでに四半世紀経過したことに触れ、この25年間で世界経済の規模が倍増したこと、それに対して航空旅客数は3倍に増えた状況を説明。成長エンジンとなったのはもちろん、新興市場である。航空機の数は(3倍ではなく)2倍にしか増えていないが、これはロードファクターが増えたこと、航空機の航続性能が高まったことを意味しているとの分析だ。
さらに、世界的パンデミックを経験するも、市場の規模はコロナ前の水準、あるいはさらなる成長局面にあり、2030年には2018年比で航空旅客数が45%増加すると予測している。
20年間で2.3倍に増加した日本発着国際線
そんななか、日本はどうか。日本における国際線の便数もこの20年間で比較すると2.3倍に拡大しており、さらに北米とアジアを結ぶコネクティング・ハブとしての東京の存在感がさらに高まっている状況にも注目する。この10年間の増加率は25%にもなるとのこと。東京=北米路線の33%を接続便の利用者が占め、うち半数を東南アジアと中国からの旅客が占めていると分析する。
また、多くのインバウンド旅客を迎えてきた近年の日本路線では、近隣アジアとを結ぶ路線においてナローボディ機材が占める割合が高まっている状況がある。過去20年間で見ると日本の航空会社のナローボディ機材も3倍に達し、言うまでもなく、2012年以降に相次いだ本邦LCCの運航開始がその理由の筆頭に挙げられるだろう。
「787が世界最高の旅客機であり続ける努力を続けていかなくては」
2026年に計画されているマイルストーンとしては、順にANA、スカイマーク、JALへの737 MAX(737-8)納入が予定されているほか、未完成のラインナップである737-10、737-7の型式証明取得についても言及があった。737 MAX全体の受注機数は6,850機(119社※2025年11月時点)で、内訳は737-10が1,290機、-9が497機、-8が4,772機、-7が291機となっている。今後は最終製造ラインを置くレントン工場の月産レートを50機まで高め、その後も需要を見ながら増産を検討したいと語った。
他方、ワイドボデイ機材はボーイング747をはじめとする大型機が中心だった25年前から大きく顔ぶれを変えた。平均飛行距離も30%延伸しており、787を筆頭に長距離性能に優れた双発機材の登場が後押している。興味深いデータも語られ、世界で運航されている787の4便のうち1便、つまり25%が日本発着であるといい、なかでも世界でもっとも多くの787を運航する航空会社であるANAの存在感が際立つ。
787については、「私たちボーイングは、787が世界最高の旅客機であり続ける努力を続けていかなくてはならない」という言葉が印象的だった。787の2025年の受注機数は世界全体で339機、対して納入機数は74機で、需要と供給の関係性でいえば圧倒的に需要の方が大きい(2025年11月時点)。また受注機数のうち45%を787-10が占めるとのことであった(ちなみに競合するA350の場合、受注52機に対して納入33機。A330neoの場合、受注96機に対して納入26機)。
この状況に対して、最終組み立てラインを置くサウスカロライナ工場を拡張するなど、カスタマーのニーズに応えるための投資を進めているところだ。拡張後の月産レートは10機以上になる。
そして777X、2026年の型式証明取得に注力
北東アジア地域においては大型機の比率が他市場より高く。それだけにボーイングの将来ラインナップにおいては777Xの重要性が大きいと見る。
日本においては2025年から26年にかけてANA、JALで相次いで777導入から30周年の節目を迎え、これまで両社に100機以上(ANA 65機・JAL 46機)を納入してきた実績について、ダレン氏は「日本市場における777の価値を反映した数字」と評する。777Xは現在619機(2025年10月末現在)の受注を獲得しており、まずは旅客型777-9について2026年の型式証明取得が待たれる。
777Xシリーズの中では、777Fの後継フレイターとして777-8Fの開発も計画されているが、貨物専用機についてはボーイング機が90%という絶大な世界シェアを誇る。それだけに新型機への期待も大きいが、ダレン氏は航空機開発の一般論として、「基本モデル(777-9)の実用化から2年ほどの時間を要するだろう」とのスケジュール感を示した。
また、前述した長距離路線の旅客便と同様、貨物便においても東京がコネクティング・ハブとして高い存在感を誇り、成田空港を経由して他地域へと向かう通過貨物が38%(ほか輸入34%・輸出28%)を占めるとの分析を語った。