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ANA、空港サービスの「クオリティアワード」表彰式開催。安全保安・定時性・快適性を評価

ANAは今回で19回目となる空港サービスの品質を評価し、表彰する「ANAクオリティアワード」を開催。国内外90以上の空港の現場を担当するスタッフが集結した。

文:本誌編集部 写真:本誌編集部
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ANAが、就航空港のサービス品質を表彰する「第19回ANAクオリティアワード」開催。

 ANAは6月13日、コングレスクエア羽田で「第19回ANAクオリティアワード」を開催した。これはANAが就航する各空港の品質実績を評価し、高い顧客満足を実現することに貢献した空港を評価するものだ。国内50空港、海外約40空港から約290名の空港スタッフが会場に集結。復便したウィーン空港や、新規就航したミラノ、ストックホルム、イスタンブールからもオブザーバーとして参加した。

 式では冒頭、6月12日に発生したエア インディア171便の事故の犠牲者への黙祷を捧げたうえで、上席執行役員 オペレーションサポートセンター長の岡 功士氏が開会のあいさつに立った。「この場は日々の品質向上に取り組んでいる皆さんが横断的に知識の習得やコミュニケーションをしていただいて、よい事例を含めて持ち帰っていただく場にしていただきたい。そして1年間の集大成を評価して表彰させていただく貴重な場だと考えている」とアワードの目的を説明。

 「インバウンド需要が急速に戻ってきたなか、オペレーションにおいて非常に課題がある1年だった。日本の天候不順もあり、皆さんに大変苦労していただいたが、そのなかで基本品質の維持向上をしていただいたと思っている」と謝意を示した。

 その後、前年度に最優秀賞を受賞した新潟空港所(新潟航空サービス)、Beijing Airport Teamから岡氏にトロフィーが返還された。

ANA上席執行役員 オペレーションサポートセンター長 岡 功士氏。

 また、今年度はANAの井上慎一 代表取締役社長も出席。「世界各地の空港でANAの顔として、お客さまと直接向き合い、高品質なサービスを提供し続けている皆さんに、心から感謝申し上げる」と述べたうえで、2024年度を振り返り、岡氏同様に難しさ求められるオペレーションのなかでの対応、新規就航の実現、SKYTRAXからの評価、過去最高の売上高の達成などに対して、空港スタッフに感謝の言葉を述べた。

 そして、スカンジナビア航空の元CEO、ヤン・カールソン氏の著書である「真実の瞬間」に関するエピソードを紹介し、「ワクワクで満たされるという新ビジョンのもとで、お客さま起点で感動的な顧客体験を届けていただきたい」との思いを伝えた。また、さまざまな課題について、「お客さまにとってANAグループの事情は関係ない。不安・不満があればお客さまは離れてしまう。そうなれば皆さんの生活は成り立たない。当事者意識を持ってほしい」と訴えた。

 顧客サービスの将来については、人的なサービス、すなわち“おもてなし”については十分でSKYTRAXの評価などでも実証されている一方、デジタルな体験価値については遅れをとっているとし、「デジタルで追いつければ敵なしになると意識しながら経営の舵取りをしていきたい。しかし、どんなにデジタル化、AI化が進んでも、未来のANAの品質を支えるのは皆さん。新しいホスピタリティの世界を切り拓いてほしい。AIやデジタルは真似できるが、皆さんが作り出したANAの価値は簡単には真似できない。これが勝負どころになる」と、新たなホスピタリティを生み出すような挑戦にも期待を寄せた。

ANA代表取締役社長 井上慎一氏。

安全保安、定時性、快適性の3部門で評価

 さて、ANAクオリティアワードでは、国内線、国際線それぞれの空港を、旅客数や貨物取り扱い量に応じて5グループ(A~E)に分け、「安全保安」、「定時性」、「快適性」の観点で評価する。

 相対的に比較するのではなく、例えば安全不安事象の有無や遅延の件数など、定められた指標に対するポイントの比較となる。よって、同等レベルの品質を達成すれば(ポイント差がなければ)、同等に評価されるという仕組みになっている。その結果、安全保安部門は国内線Eグループは8空港所が1位になったのを始め、多くの空港所/空港支店が1位タイとして表彰される結果となった。空港の現場において、安全を前提としたサービスが提供されていることの証左ともいえる結果だろう。

安全保安部門1位の表彰。プレゼンターはANAオペレーションサポートセンター 空港サポート室 グランドハンドリング企画部の曽原倫太郎 部長。

安全保安部門
国内線 – 1位
Aグループ:大阪空港支店(ANA大阪空港)
Bグループ:仙台空港所(日本通運)
Cグループ:高知空港所(とさでん交通)、函館空港所(函館エアサービス)、秋田空港所(日本通運)、小松空港所(北鉄航空)
Dグループ:山口宇部空港所(サンデン交通)、徳島空港所(徳島航空サービス)
Eグループ:旭川空港所(道北航空サービス)、石見空港所(石見エアサービス)、稚内空港所(日本通運)、女満別空港所(三ツ輪エアサービス)、紋別空港所(紋別観光振興公社)、能登空港所(北陸名鉄開発)、静岡空港所(エスエーエス)、対馬空港所(対馬空港ターミナルビル)

国際線 – 1位
Aグループ:Pudong Airport Team/上海・浦東
Bグループ:Hong Kong Airport Team/香港、Ho Chi Minh Airport Team/ホーチミン
Cグループ:Taoyuen Airport Team/台北・桃園/、Qingdao Airport Team/青島
Dグループ:Incheon Airport Team/ソウル・仁川/、Hongqiao Airport Team/上海・虹橋
Eグループ:Mumbai Airport Team/ムンバイ、Hangzhou Airport Team/杭州

定時性部門1位の表彰。プレゼンターはANAオペレーションサポートセンター オペレーション企画部の山口忠克 部長。

定時性部門
国内線 – 1位
Aグループ:大阪空港支店(ANA大阪空港)
Bグループ:中部空港支店(ANA中部空港)
Cグループ:米子空港所(日ノ丸自動車)
Dグループ:徳島空港所(徳島航空サービス)
Eグループ:能登空港所(北陸名鉄開発)

国際線 – 1位
Aグループ:Los Angeles Airport Team/ロサンゼルス
Bグループ:Beijing Airport Team/北京
Cグループ:Sydney Airport Team/シドニー
Dグループ:Dalian Airport Team/大連
Eグループ:Perth Airport Team/パース

定時性部門1位の表彰。プレゼンターはANAオペレーションサポートセンター 空港サポート室 旅客サービス部の今田麻衣子 部長。

快適性部門
国内線 – 1位
Aグループ:千歳空港支店(ANA新千歳空港)
Bグループ:関西空港支店(ANA関西空港)
Cグループ:鳥取空港所(日ノ丸自動車)
Dグループ:中標津空港所(根室中標津空港ビル)
Eグループ:能登空港所(北陸名鉄開発)

国際線 – 1位
Aグループ:Chicago Airport Team/シカゴ
Bグループ:Frankfurt Airport Team/フランクフルト
Cグループ:Qingdao Airport Team/青島
Dグループ:Hongqiao Airport Team/上海・虹橋
Eグループ:Mumbai Airport Team/ムンバイ

総合部門と最優秀賞の表彰

 そして、安全保安、定時性、快適性の各部門の結果を総合した「総合部門」の表彰、そして、そのなかの「最優秀賞」が表彰される。

総合部門
国内線 – 1位
Aグループ:大阪空港支店(ANA大阪空港)
Bグループ:中部空港支店(ANA中部空港)
Cグループ:鳥取空港所(日ノ丸自動車)
Dグループ:徳島空港所(徳島航空サービス)
Eグループ:能登空港所(北陸名鉄開発)

国内線 – 2位
Aグループ:福岡空港支店(ANA福岡空港)
Bグループ:関西空港支店(ANA関西空港)
Cグループ:米子空港所(日ノ丸自動車)
Dグループ:山口宇部空港所(サンデン交通)
Eグループ:石見空港所(石見エアサービス)

国内線 – 3位
Aグループ:沖縄空港支店(ANA沖縄空港)
Bグループ:松山空港所(ANAエアサービス松山)
Cグループ:小松空港所(北鉄航空)
Dグループ:中標津空港所(根室中標津空港ビル)
Eグループ:青森空港所(秋北航空サービス)

国際線 – 1位
Aグループ:Bangkok Airport Team/バンコク
Bグループ:Beijing Airport Team/北京
Cグループ:Qingdao Airport Team/青島
Dグループ:Hongqiao Airport Team/上海虹橋
Eグループ:Perth Airport Team/パース

国際線 – 2位
Aグループ:Pudong Airport Team/上海浦東
Bグループ:San Francisco Airport Team/サンフランシスコ
Cグループ:Guangzhou Airport Team/広州
Dグループ:Dalian Airport Team/大連
Eグループ:Hangzhou Airport Team/杭州

国際線 – 3位
Aグループ:Los Angeles Airport Team/ロサンゼルス
Bグループ:Singapore Airport Team/シンガポール
Cグループ:Songshan Airport Team/台北・松山
Dグループ:Washington Airport Team/ワシントンD.C.
Eグループ:Shenzhen Airport Team/深セン

 最優秀賞は国内線が能登空港所、国際線がBeijing Airport Teamとなった。

 能登空港所は2024年1月1月に発生した地震後に運休し、1月27日に運航再開、4月からデイリー運航化。その後、ターンアラウンドタイムの正常化と、段階的に回復していくという特に難しいオペレーションが求められた1年だった。「最優秀は取れると思っていなかった。こんなにうれしいことはなく、能登のみんなも喜んでいると思う。発災直後からみんなで助けたいながら対応にあたって、お客さまからもいろいろな声をかけてくださったり、スタッフや関係者の方々も声を掛け合いながらずっと過ごしてきました。人とのつながりの大切さが一番」と喜びを語った。

 また、震災後の状況などについては、「現地スタッフでハンドリングできない部分は他空港から支援をいただいていたが、11月からは現地メンバーでハンドリングしている。飛行機のハンドリングをできることが喜びで、家に帰ると大変なこともあったが、空港では仲間がいて好きな仕事ができるのがやりがいになったと思う」とコメント。また、事務所には全国の空港からのメッセージが貼られており、「今回お顔を合わせるのは初めての方はたくさんいらっしゃるが、皆さんのメッセージや食べ物の支援など、ずっと支えてくださったという思いは今も残っている」と、感謝の思いを語った。

国内線の最優秀賞を受賞した能登空港所のチーム。

 一方のBeijing Airport Teamは2年連続の最優秀賞となった。北京はターミナルが広いためオフィス、スポット間の移動時間が長くかかったり、旅客機が4機種、貨物機が1機種と多様が期待を扱ったり、空域制限の影響による出発待ちなど、ハンドリングが難しい空港だという。

「旅客担当がいれば運航支援、整備とさまざまな担当がいるが、組織が縦割りではなく空港所みんなが一つのチームとして安全・確実にハンドリングしようとしている」、「ターンアラウンドは長めにとってはいる空港だが、それでもクルーに“うちは定時性のために35分前搭乗案内をしている”と毎便毎便、相談している。そういう例の積み重ね」、「所長を始め、管理職も現場に行くし、なにかあれば各部署と連携している。自分の担当でないことでも手が空いている人はすぐに応援に行く文化になっている」とスタッフそれぞれが、チームとしての強みを語った。

国際線の最優秀賞を受賞したBeijing Airport Team。

 式ではこのほか、海外のケータリング会社のサービスに対する「ANA Caterer Award」、外航便の受託のハンドリングで優れたサービス品質に対する「受託便貢献賞」もそれぞれ表彰された。

ANA Caterer Award
長距離:サンフランシスコ(Flying Food Group)
中距離:ハノイ(Noi Bai Catering Service)
短距離:広州(Guangzhou Nanland Air Catering)

受託便貢献賞
広島空港所(中国ターミナルサービス)

「ANA Caterer Award」の受賞者。
受託便貢献賞を受賞した広島空港所。

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