特集/本誌より

航空安全の想いを込めて、穴守稲荷神社献灯祭 〜羽田空港の夏の夜、芸事上達の祈願の火灯る〜

京浜急行の駅名としてもよく知られる穴守稲荷。夏になると美しく夜を彩る献灯祭は、羽田のこの地域にゆかりある人たちに愛されている風物詩で、家内安全はもちろん、芸事そして土地柄から航空の安全を願う多くの関係者たちも、その優しい灯りに切なる願いを捧げる。作品を奉納する航空写真家のT.Fujiba氏から報告が届いた。

文:T.Fujiba(藤林敏啓) 写真:T.Fujiba(藤林敏啓)
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年々その数を増す飛行機写真の行燈。さながら「夜に煌めくギャラリー」のようだ。

今年も羽田の夏夜に灯った「飛行機写真」の奉納

 羽田空港の夏の夜を、無数の灯りが幻想的に彩る。

 空港のほど近くに鎮座する穴守稲荷神社で、夏の恒例祭事「献灯祭」が8月23日、24日の両日にわたって執り行なわれ、航空安全や芸事上達、家内安全などを願う人々の想いを込めた行燈が埋め尽くす境内は、多くの参拝者で賑わった。

 今年の奉納数は、過去最高となる961基を記録。祭りの始まりを告げる初日の奉告祭には100人を超える参列者が集まり、厳かな雰囲気の中で祭事の成功と参列者の願いが祈願された。祭りの規模は年々拡大しており、地域住民だけでなく遠方からの参拝者も増えているという。

羽田の夏の夜を彩る献灯祭。神社の厳かな雰囲気と祭りの賑わいが一体となり、特別な空間を生み出していた。

夜に煌めくギャラリー

 本誌読者として特に注目したいのが、年々増加傾向にある「飛行機写真」の奉納だ。かつて空港敷地内に鎮座していた歴史的背景から、航空関係者からの信仰も篤い同社。この写真奉納の輪が大きく広がったのは、本誌でもおなじみの航空写真家ルーク・オザワ氏が昨年に引き続き作品を奉納したことも大きな要因と言えるだろう。氏の行燈は多くの参拝者の注目を集めていた。筆者も数年前から参加しており、今年も家内安全などを願い、ささやかながら作品を奉納した。

 写真展への出展と比べ、誰もが気軽に参加できる敷居の低さも、多くのファンを惹きつける魅力だろう。

 航空関係者や多くの航空ファンが撮影した渾身の一枚が行燈となり、夕闇に浮かび上がる。飛行機写真やイラストが並ぶ様は、さながら夜に煌めくギャラリーのようだ。この光景こそ、空の玄関口・羽田ならではであり、航空安全への切なる祈りを物語っている。

日が暮れると、行燈の灯りが境内を幻想的に照らしだす。多くの参拝者が訪れ、祭りは最高潮の賑わいを見せた。

航空写真における芸事の奉納

 写真やイラストの奉納は、神道における「奉納」の原点を思い起こさせる。それは、自らの生業や技術の粋を尽くしたものを神に捧げ、感謝や願いを形にする行為だ。かつて芸能者が磨き上げた「芸」を奉納したように、現代では航空写真家、漫画家、イラストレーターといったクリエイターたちが、技術の結晶である作品を奉納する。それらはまさに、現代における「芸事」の奉納と言えるだろう。

 航空安全、創作活動の上達、日々の暮らしへの感謝など、そこに込められた願いは様々だが、根底には自らの情熱の成果を神に捧げるという、古来より続く祈りの心が流れている。一人ひとりの想いを乗せた光が揺めく献灯祭は、羽田の夏の夜を彩る特別な祭りとして、今後ますます多くの人々を魅了していくだろう。来年はぜひ、あなたも願いを込めた行燈を奉納してみてはいかがだろうか。

京浜急行の駅名としてもよく知られる穴守稲荷。夏になると美しく夜を彩る献灯祭は、羽田のこの地域にゆかりある人たちに愛されている風物詩で、家内安全はもちろん、芸事そして土地柄から航空の安全を願う多くの関係者たちも、その優しい灯りに切なる願いを捧げる。作品を奉納する航空写真家のT.Fujiba氏から報告が届いた。

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